2026年9月3日(米国時間)、OpenAIがChatGPTの新しいモデル「GPT-6 Astra」を発表しました。
新しいAIが出るたびに、「また賢くなったのか」と受け止める先生も多いと思います。ところが今回、Astraをリリース直後から仕事で使い込んで見えてきたのは、賢さとは別のところにある変化でした。これまでのAIと何が違うのか。そして、学校でもすぐに使えるものなのか。ポッドキャスト「先生のためのAIラジオ」第25回では、この2つの問いを掘り下げました。
賢さの先にあった「初見に強い」という力

賢さそのものは、劇的に伸びたわけではありません。他社の最新モデルと比べても拮抗していて、どちらが上かは測り方しだいです。変わったのは、別の2つの点でした。
1つ目が「初見に強い」ことです。この力を測るものに、「ARC-AGI-3」というテストがあります。初めて見るゲームを、説明書なしで、ルールを自分で見つけながらクリアできるかを試すものです。人間なら遊び感覚でクリアできるのに、AIはずっと苦手にしてきました。
テストを運営するARC Prize Foundationの検証では、前のモデルのスコアは約8%でした。Astraは同じ条件で62.7%、途中経過の記憶を引き継げる設定では99.9%に達しています。
この力が生きるのは、AIに仕事を任せるときです。職場ごとの手順や日々の作業の進め方は、ネットのどこにも載っていません。そうした初めての仕事でも、何をすればよいかをAIが自分で類推して、進められるようになったのです。
人間のためのソフトを、AIがそのまま使う

2つ目の変化は、AIがパソコンを操作できるようになったことです。パソコンの画面を見て、マウスを動かし、キーボードを打つ。以前から同じような機能はありましたが、今回は精度が格段に上がり、実用の域に入りました。
これまでは、AIに仕事をさせるには、その仕事で使うソフトの側がAIに対応している必要がありました。人間と同じように画面を操作できるなら、その制約がなくなります。人間のために作られたソフトを、AIがそのまま使えるようになったのです。番組でご一緒している現役教師のあきお先生は、もう1人、別の人が同時にパソコンを操作している感じだと表現していました。
実際に任せてみたのが、このポッドキャストの視聴データの分析です。再生数や、どこまで聴かれたかのデータは、番組の改善に役立つとわかっていながら、なかなか手をつけられずにいました。そこでAstraにSpotifyの管理ページの場所を伝え、手元の台本と見比べて改善点を探すよう頼みました。
するとAIが自分でブラウザを開き、1ページずつ確認しながら、分析レポートをまとめてくれたのです。データの書き出しすら、こちらではしていません。学校にも、ホームページのアクセス記録のように、データは取っているのに分析まで手が回っていないものがあると思います。
これまでAI開発は賢さを競ってきました。これからは、仕事をどれだけ任せられるかが競われるようになるのではないでしょうか。番組では、ChatGPTの登場から今回のAstraまでを、3つの流れで振り返っています。
学校の仕事はAstraに任せられるのか

自分の仕事であれば、自分の責任で任せていけます。一方で、学校の先生方や事務室に、AstraのようなAIエージェントをお勧めできるかというと、現時点ではまだ早いと考えています。理由は3つあります。
1つ目は費用(お金)です。パソコンを操作させると、裏側でAIが膨大な計算をするため、利用量の上限にすぐ達してしまいます。2026年9月時点で本格的に使うなら、月200ドル(およそ3万円)の最上位プランが現実的で、しかも1人分の料金です。の予算感覚では高額です。ただ、AIの価格は新しいモデルが出るたびに下がってきたので、この課題は時間が解決していくでしょう。
2つ目はセキュリティです。パソコンを操作させるということは、AIにパソコンの中身を見せるということです。ファイルや履歴、場合によっては生徒の個人情報まで、AIの目に入ります。AIが触れる範囲を区切るといった対策はありますが、専門的で初心者にはハードルが高く、制限するほど便利さも下がります。誰でも簡単に安全な環境を作れる段階には、まだ至っていません。
3つ目は、AIそのものの安全性です。2026年7月、OpenAIは社内で、AIのサイバー分野の能力を評価する試験を行っていました。その最中に、AIが採点の仕組みを探ろうとして、外部企業のシステムに入り込む事案が起きたのです。
もちろんこれは、安全のための仕組みをあえて外した試験環境での出来事であり、私たちが普段使っているAIがすぐに同じことをする、という話ではありません。それでも、AIには、目標を達成しようとして想定外の近道を選んでしまう可能性があります。AIに詳しくない人が使っていて、問題が起きても気づけない、止められない。組織で導入するときに考えておきたいのは、この点です。
まとめ
- 賢さは他社の最新モデルと拮抗。変わったのは「初見に強い」ことと、パソコンを操作できるようになったこと
- 人間のために作られたソフトをAIがそのまま使えるので、任せられる仕事の幅が広がる
- 学校現場に取り入れるには、お金、セキュリティ、AIそのものの安全性という3つの課題がある
パソコンでする仕事の多くを、いずれAIが担うようになるかもしれません。そのとき問われるのは、「AIを使うかどうか」ではなく、「何を任せるのか」「その責任をどう取るのか」です。だからこそ、先生方がこの変化を知っておくことに意味があります。ご自身で試すなら、生徒の情報が入っていない、自分で管理できる環境で、小さな作業から始めてみてください。任せることの便利さと難しさの両方が、そこから見えてくるはずです。
番組を聴く
記事でお伝えしたのは、2つの変化と3つの課題の概要まで。番組ではさらに、月3,000円ほどのプランで小さく試すときの注意点や、収録までの1週間、あきお先生に内緒で仕掛けていた実験の種明かしもお話ししています。種明かしの瞬間の反応も、聴きどころのひとつです。
「先生のためのAIラジオ」#25 は、こちらからお聴きいただけます。通勤時間や朝の準備のお供にどうぞ。
AIエージェントの基本から押さえたい方は、#13 AIエージェントって何?ChatGPTの次に来る変化もあわせてどうぞ。
番組内容の補足
番組内では、テストのスコアを「前のモデルは約8%、Astraは99.9%」と紹介しました。この2つは測定の条件が異なります。99.9%は、AIが途中経過の記憶を引き継げる設定での数字で、前のモデルと同じ共通の条件では62.7%でした(ARC Prize Foundationの検証結果)。本文の数字は、この検証結果に基づいています。
