日本と世界のAI活用の差、先生に何ができるか(先生のためのAIラジオ #26)

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日本で生成AIを使ったことがある人は、何割いると思いますか。そして日本は、世界の中で進んでいるほうでしょうか。

総務省がこの夏公表した「令和8年版情報通信白書」に、その答えがあります。今年の特集はAIです。日本、アメリカ、ドイツ、中国の4か国で行った同じ内容の調査から、使ったことがある人の割合、世代による差、企業での使い道までが分かります。使う人は、この1年で大きく増えました。ところが4か国の数字を並べると、本当の差は「使っているかどうか」ではなく、「どう使っているか」にあることが見えてきました。ポッドキャスト「先生のためのAIラジオ」第26回では、この白書を入り口に、日本と世界のAI活用の差と、先生にできることを掘り下げました。

目次

1年で2倍に増えた日本、その先を行く世界

調査で生成AIを使ったことがあると答えた人は、日本では58.8%でした。前年度の調査では26.7%でしたから、1年でおよそ2倍です。年代別に見ると、15歳から19歳では91.7%。一方、40代は49.0%、50代は44.2%と、10代の半分ほどにとどまります。生徒のほうが先生より生成AIを使った経験があるという教室は、珍しくないはずです。

ところが、ほかの3か国と並べると見え方が変わります。使ったことがある人は、アメリカとドイツが75.6%、中国は93.6%。日本の58.8%は、4か国で最も低い数字でした。使ったことがある人のうち「ほぼ毎日」使う人も、日本は約3割で、ほかの3か国はいずれも4割を超えています。中国では、60代でも86.5%が使ったことがあると答えています。年代別の数字を並べると、若い世代と上の世代の差は、4か国の中で日本が最も大きくなっています。

議事録の日本、研究開発のアメリカ

仕事の場面ではどうでしょうか。何らかの業務で生成AIを使っている企業は、日本でも86.4%。前年度の55.2%から大きく伸び、アメリカ(90.9%)やドイツ(91.6%)との差は縮まりました。導入という点では、追いついたと言えます。

差が出たのは、活用方法です。生成AIを使っている企業のうち、効果を感じている割合が最も高かった業務は、日本では「議事録・メール作成補助」で、72.3%にのぼります。ほかの業務を大きく引き離しています。アメリカで最も高かったのは「研究・商品開発」の47.5%で、「議事録・メール作成補助」は42.6%でした。目の前の仕事を速く終わらせるために使うのか、新しいものを生み出すために使うのか。同じ「使っている」でも、中身が違います。

会社としての姿勢にも違いが見えます。生成AIを「積極的に活用する方針」の企業は、日本が30.1%で4か国の中で最も低く、中国は49.8%でした。さらに、生成AIで仕事のやり方を変える「組織的な取り組みはない」と答えた企業は、アメリカ1.4%、ドイツ4.9%、中国2.6%に対して、日本は27.0%。ほかの3か国がいずれも5%に届かないなかで、日本だけ桁がひとつ違います。海外の企業がAIに合わせて仕事のやり方を変え始めているのに対し、日本では導入で止まっている企業が少なくないのです。

この構図には、既視感があります。20年ほど前、日本にはインターネットのビジネスを軽く見る風潮がありました。いま世界の時価総額の上位に並ぶのは、その間に伸びたアメリカのIT企業です。舞台がインターネットからAIに置き換わっただけで、同じことがもう一度起きるのではないか。AIを使う企業と使わない企業の差は、やがて国の差になり、一人ひとりの仕事の差になっていきます。この差を「AI格差」と呼びます。議事録やメールの作成だけで止まっていると、問題を解いたり新しいものを生み出したりする使い方には届かず、差は広がっていきます。その始まりが、白書の数字から読み取れます。

友人、カウンセラー、秘書、そして日本は

白書の中で、もう一つ目を引くデータがあります。生成AIをどのような存在だと感じているか、4か国で調査した結果です。

日本、アメリカ、ドイツの1位は「機械・道具」で共通でした。分かれたのは2位です。アメリカは「友人」、ドイツは「カウンセラー」。中国は1位が「秘書・アシスタント」、2位が「友人」でした。そして日本の2位は、「辞書・百科事典」です。利用率が日本より高い3か国では、生成AIを「感情を共有する相手」として捉える層が相当数いる、と白書は分析しています。

辞書との付き合いは、一方向です。必要なときに引いて、答えを受け取るだけの関係です。この使い方だけでは、AIと一緒に課題を解決したり、新しいものを生み出したりする発想は出てきません。企業の使い道で議事録が突出していたのも、同じ構図ではないでしょうか。使うか使わないかの前に、AIとどんな関係を結んでいるか。AI格差の根っこは、AIとの関係性にあるのかもしれません。

先生にできる2つのこと

それでは、これらの課題に先生として何ができるでしょうか。番組では、2つのことが挙がりました。

一つ目は、現状を伝えることです。現役教師のあきお先生が挙げたのは、ここまで見てきたような数字を生徒に伝え、リテラシーを育てることでした。日本と世界の差を知ることが、AIとどう付き合うかを考える出発点になります。

二つ目は、AIを相棒にして課題を解決する経験を、授業の中で持たせることです。私がアドバイザーとして関わる守谷市では、2026年8月、市内の子どもたちが集まるイベントで、「守谷市をもっと幸せな街にするために」というテーマのグループワークを行いました。正解が一つではない問いを、AIと一緒に考える。答えを聞く相手ではなく、一緒に考える相棒としてAIを使っていく体験です。こうした経験を重ねた子どもたちにとって、AIは辞書ではなく、課題を一緒に解決する相棒になっていきます。それが、AI格差を埋める一歩になります。

新しいテクノロジーは、AIで終わりません。10代のうちに、面白いと感じながら新しいテクノロジーに触れた経験は、次の技術革新が来たときに手を伸ばす力になります。その経験をすべての子どもに届けられる場所が、学校ではないでしょうか。

番組を聴く

番組では記事で触れた内容に加えて、職員室で見え始めた使う先生と使わない先生の差、使わない先生のハードル、進路相談にAIを使う高校生の話を、あきお先生の実感を交えて掘り下げています。日本の2位が「辞書」だと聞いたときの、あきお先生の反応もぜひ本編で。

「先生のためのAIラジオ」#26 は、こちらからお聴きいただけます。通勤時間や朝の準備のお供にどうぞ。

学校としてAI活用を段階的に進める道筋は、#14 AI教育の進め方で迷わない、4ステージのロードマップもあわせてどうぞ。

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著者

AI教育コンサルタント / 株式会社FlipSilverlining 代表取締役 / 守谷市生成AI活用推進プロジェクトアドバイザー
自治体のAI教育アドバイザーや私立中高の教育コンサルとして学校現場に入りながら、AI時代の教育について書いています。著書3冊(明治図書)、教員研修・講演120回以上、授業視察1,000回以上。

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