国際学力調査PISAも授業の小テストも、AIでここまで分析できる(先生のためのAIラジオ #27)

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AIを使わせると、子どもの学力に響くのではないか。生徒にAIを使わせることを考え始めた先生なら、一度は浮かぶ心配です。

2026年9月に公表された国際学力調査PISA 2025に、その答えを探す手がかりがありました。生徒が学校の勉強でAIを使う頻度と、得点を並べたデータです。使えば使うほど得点が高い、という形にはなっていませんでした。ポッドキャスト「先生のためのAIラジオ」第27回では、この関係を、公開されている元データまでAIと一緒に掘り下げました。

目次

国際学力調査PISAは、なぜ注目されるのか

PISAは、OECDが行う15歳を対象にした学習到達度調査です。測るのは科学、読解力、数学の3分野。知識や技能を、実生活の場面でどのくらい使えるかを見ます。日本では高校1年生が受け、2025年調査には91の国と地域から約76万人が参加しました。今回、日本は3分野すべてでOECD加盟国の中で1位。3分野そろっての1位は、調査が始まってから初めてです。

この調査が注目されるのは、結果が多くの国で教育政策を見直すきっかけになってきたからです。日本では、2003年の調査で読解力の得点が下がり、2004年12月に結果が公表されると大きく報じられました。文部科学省は読解力を伸ばすプログラムをつくり、学習指導要領の見直しの検討を進めました。のちに「PISAショック」と呼ばれるようになった出来事です。

PISAは、政策を振り返る材料にもなります。記憶に新しい実例が、GIGAスクール構想です。この調査は、学力だけでなく、学校でのデジタル機器の使い方も聞いているからです。構想が始まる前の2018年調査では、国語、数学、理科の授業でデジタル機器を使う時間が、日本はOECD加盟国の中で最下位でした。授業では「利用しない」と答えた生徒が、3教科とも8割前後にのぼっていました。

2025年調査は質問のしかたが変わっているので、単純には比べられません。それでも、授業でデジタル・リソースを使うことが「まったく、又はほとんどない」と答えた生徒は、OECD平均の33%から43%に対して、日本は教科によって44%から60%。授業でほとんど使わない生徒は、今も日本のほうが多い状態です。一方で、「学校には、生徒全員のために十分なデジタル・リソースがある」と答えた生徒は、OECD平均の73%に対して日本は86%でした。この違いのすべてをGIGAスクール構想の効果だと言い切ることはできませんが、前と後の数字からは一定の成果が読み取れるのではないでしょうか。

同じ調査でも、立場や関心によって、注目する数字は変わります。AI教育に関わる私の目は、今回初めて加わった項目に向きました。

AIを使う頻度と得点、言えることと言えないこと

今回のPISAには、生徒が学校の勉強でAIをどのくらい使うかを聞く項目が初めて加わりました。学習を助けてもらうためにAIチャットボットを週に1回以上使う生徒は、OECD平均の46%に対して日本は27%。4つの使い道をまとめた「AIの利用頻度」の指標では、日本はOECD加盟38か国中38位でした。

気になるのは、使う頻度と得点の関係です。頻度の選択肢は「まったく、又はほとんどない」から「毎日又はほとんど毎日」までの5つ。OECDが公表している表で、学習を助けてもらうためにAIを使う頻度ごとに日本の生徒の科学の平均点を見ると、いちばん高いのは週に1、2回のグループで548点。毎日使うグループは529点で、19点ほど低くなっています。

最初に頭に浮かんだのは、第20回でお話しした認知的オフローディングでした。考える作業までAIに任せると、練習の機会が減ってしまう。その影響かもしれません。

ただ、ここで一度立ち止まる必要があります。PISAは、同じ生徒を追いかけた調査ではありません。毎日使うグループと週に1、2回のグループは別の生徒ですから、「毎日使ったから成績が下がった」とは言えないのです。AIへの任せ方が考える機会を減らしているのかもしれませんし、勉強に困っている子ほど毎日AIに助けを求めているのかもしれません。どちらなのか、両方なのかは、この数字だけでは分かりません。それでも、毎日使う子の得点が低いという結果は、気にかける必要があります。

気になった数字は、AIを使って元データを確認

思っているだけでは、先に進めません。そこで、元のデータに当たることにしました。PISAの生徒のデータは、誰でもダウンロードできる形で公開されています。ただし約76万人分という大きさで、以前に別のテーマで分析しようとしたときは、パソコンで開くだけで時間がかかり、途中で断念した経験があります。

今回は、第25回で紹介したGPT-6 Astraに任せました。使ったのは、プログラムを書いて実行するAIエージェント「Codex」です。最初の指示は、数行の走り書きでした。報道と生データを調べ、データが手に入ったら、AIの利用と得点の関係を確かめたい。その程度です。それでもAIはデータを取ってきて、まず公式に発表されている数字と合うかを検算し、そのうえで私の疑問に答えてくれました。

ぶつけた問いは3つです。毎日使うグループの得点が低いという傾向は、ほかの国でも見られるのか。AIが出した情報が確かかどうかを授業で確かめた経験のある生徒なら、違うのか。毎日使う生徒は、AIを何に使っているのか。3つの答えと、そこから言えること、言えないことは、番組で順にお話ししています。ひとつだけ先に書くと、3つを調べても因果関係までは分かりませんでした。分かるのは、次に確かめるべき仮説です。

PISAの数字は、どこを切り取るかで見え方が変わります。順位に目を向ければ「1位」、政策の目で見ればGIGAスクールの前と後、AI教育の目で見れば、使う頻度と得点の関係。そして「毎日使う子の得点が低い」という数字も、同じ生徒を追った調査ではないと知っているかどうかで、受け止め方が変わります。

授業の小テストも、AIを使って分析

収録の最後に、予定になかった話が飛び出しました。PISAの元データをAIに任せた話を受けて、あきお先生が、最近は小テストの分析をAIに任せている、と話し始めたのです。

やり方はシンプルです。採点を終えた物理の小テストの答案を、名前を消してPDFにする。問題と、自分で作った解説も一緒にAIに読み込ませて、分析と、生徒向けの講評プリントを頼む。それだけで、これまで感覚でつかんでいた「この問題は間違いが多かった」が、はっきり見えるようになったといいます。小テストの返し方がどう変わったのかは、ぜひ番組でお聴きください。

世界の学力調査も、手元の小テストも。気になる数字に出会ったら、AIと一緒に元のデータまで確かめにいく。それが個人でもできる時代になりました。

番組を聴く

記事でお伝えしたのは、AIの項目の読み方と、元データで確かめた3つの問いの立て方、そして小テストの実践のあらましまで。番組では3つの問いの答えを、国ごとの違いや使い道による差まで含めてお話ししています。答案を読んだAIが返してきた思わぬ指摘と、そこから生まれた次の一手も、ぜひ本編で。

「先生のためのAIラジオ」#27 は、こちらからお聴きいただけます。通勤時間や朝の準備のお供にどうぞ。

「毎日使う子の得点」の背景にある考え方は、#20 AI教育のエビデンス、思考力が落ちる分かれ目はどこかで。元データの分析に使ったAIは、#25 ChatGPTの新モデル Astra 使ってみた、AIがパソコンを操作する時代へで紹介しています。

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著者

AI教育コンサルタント / 株式会社FlipSilverlining 代表取締役 / 守谷市生成AI活用推進プロジェクトアドバイザー
自治体のAI教育アドバイザーや私立中高の教育コンサルとして学校現場に入りながら、AI時代の教育について書いています。著書3冊(明治図書)、教員研修・講演120回以上、授業視察1,000回以上。

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