4月1日、教育に関わる複数の法改正が一斉に施行されました。改正給特法による主務教諭の新設と業務量管理の義務化、改正義務標準法による中学校35人学級のスタート、高校授業料の無償化拡充、小学校給食費の負担軽減、そして共同親権制度の開始。11年ぶりの暫定予算という異例の状況下で、教育制度の「実行フェーズ」が動き出しています。今週はこれらの制度変更を整理するとともに、GIGAスクールのインフラ進捗を示すネットワーク調査の結果もお伝えします。
中学35人学級と教員処遇改善が始動
今週、教員の働く環境に関わる2つの法律が動き出しました。
1つ目は改正義務標準法です。3月31日に参院本会議で可決・成立し、翌4月1日に施行されました。2025年度に小学校で完成した35人学級を中学校にも拡大するもので、2026年度は中学1年生から開始し、2028年度に全学年へ広げます。定数改善は約1.7万人規模ですが、初年度の中学1年生だけで教室が全国1,679室不足しているとされ、全学年に広がる2028年度にはさらに増える見込みです。施設面での対応も急務です。養護教諭の複数配置基準も引き下げられ(小学校851人→801人、中学校801人→751人)、共同学校事務室を統括する事務職員の算定基準も新設されました。参院の附帯決議では、35人学級で非正規教職員が増えないよう正規採用を促すことも明記されています。
2つ目は改正給特法の本格施行です。昨年6月に成立した同法のうち、教職調整額の引き上げ(4%から段階的に10%へ)と学級担任手当(月3,000円)は今年1月に先行開始済みです。4月から新たに始まったのは、主務教諭の新設と業務量管理の義務化です。主務教諭は教諭と主幹教諭の間に設けられた新たな職で、月約6,000円の加算が予定されています。「教諭の基本給が下がるのでは」という懸念もありますが、文科省は「引き下げることは考えていない」と国会で明言しています。
制度の全体像は以上ですが、私が最も注目しているのは業務量管理計画の公表義務化です。教育委員会に対し「業務量管理・健康確保措置実施計画」の策定と公表が義務付けられ、全教員の時間外在校等時間を月45時間以下とすること、年間の月平均を30時間程度とすることが目標として掲げられました。これにより、自治体間の勤務実態の比較が制度的に初めて可能になります。
つまり、教員が「どの自治体で働くか」を選ぶ際の判断材料が増えるということです。処遇や働き方に差がある自治体間での人材獲得競争が加速する可能性があります。
さらに踏み込んで言えば、時間外勤務の大きな要因の一つである部活動の実態についても、この計画の中に組み込んで公表対象にすることで、改革の実効性は一段と高まるのではないでしょうか。現在、部活動の活動時間や休養日の公表は文科省のガイドラインで求められているものの、法的義務ではなく、学校間で対応に差があります。残業時間を可視化する仕組みが整ったのであれば、その主要な要因である部活動の情報も合わせて公表することが自然な流れです。
高校無償化と小学校給食費の負担軽減が4月スタート
3月31日、高校授業料の無償化を拡充する改正法が参院本会議で可決・成立しました。高校生向け「就学支援金」の所得制限を私立を含め全国で撤廃し、私立全日制の支給上限を一律で年45万7,200円に引き上げます。対象拡大は約80万人で、費用負担は全額国庫から国3/4、都道府県1/4に変更されました。改正法には、施行後3年以内に受給資格や支給の在り方を検討する規定も盛り込まれています。
同じく4月から、小学校給食費の負担軽減も始まりました。公立小学校の児童の給食食材費を国が支援する制度で、完全給食の基準額は月5,200円(年11ヶ月分)です。ただし「無償化」と報道されることもありますが、正確には「負担軽減」です。基準額を超える食材費は学校給食法に基づき保護者からの徴収が可能で、地域によっては保護者負担が残ります。なお、生活保護の教育扶助や就学援助を受けている児童はそちらが優先され、本事業の対象外です。
これらの財源を確保するため、3月30日に11年ぶりとなる暫定予算が成立しました。文科省の一般会計1,176億円には、就学支援金交付金477億円、義務教育費国庫負担金394億円、給食費負担軽減交付金149億円が計上されています。
共同親権の施行と学校対応
4月1日、改正民法の施行により、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」を選択できるようになりました。
結論から言えば、学校の日常業務はほとんど変わりません。法務省は「基本的にはこれまでの婚姻中・別居中の父母への対応と同じ」との見解を示しています。そもそも学校は保護者の親権の状況を把握できる立場にないため、保護者からの申告がなければ従来通りの対応で問題ありません。
実務上、注意が必要になるのは転学や就学校変更など、子どもの学びの場を大きく変える手続きです。こうした場面では共同親権の場合、父母双方の意思が求められます。一方、出欠連絡や行事参加の同意、給食に関する手続きといった日々の対応は、一方の親権者とのやり取りで完結します。
法務省がウェブサイトで公表しているQ&A(「民法編」「行政手続・支援編」)は、現場から実際に寄せられた問い合わせをもとに作られた実務的な資料です。過度に構える必要はありませんが、一度目を通しておくと安心です。
学校ネットワーク「必要速度」の充足率63.9%に到達
文科省が4月1日までに公表した2025年度「学校のネットワーク状況に関する調査」の結果によると、全児童生徒が同時に端末を利用しても支障がない「必要なネットワーク速度」を確保した公立学校は63.9%(約2万318校)に達しました。2023年度の前回調査では約2割でしたから、42.3ポイントの大幅改善です。
調査は全国の公立学校3万1,818校、1,814設置者を対象に、2025年12月1日時点の状況を確認したものです。ネットワークの負荷を測定・分析する「ネットワークアセスメント」の実施済み設置者も71.6%(1,299設置者)に達し、前回の44.1%から27.5ポイント増加しました。文科省は2028年度末に約95%の設置者が全校で必要な速度を確保する見通しを示しています。
「必要な速度」を確保した63.9%という数字は大きな前進ですが、裏を返せば残り約36%の学校ではまだ日常的なICT活用に支障がある状況です。さらに、本調査は公立学校が対象であり、私立学校のネットワーク環境は全体像すらわかっていません。地方での講演会の際に聞いた話では、AI活用以前にネットワーク環境の問題でICTの段階で止まっている学校も珍しくないです。東京都のように独自のICT助成が充実した自治体と、そうでない地方との環境格差は広がっています。次世代校務環境への移行が始まるこのタイミングで、地方のインフラの底上げが追いつくかが問われています。
【情報源】
- 教育新聞「中学校35人学級などの改正義務標準法が成立 高校無償化も」2026年3月31日
- 教育新聞「主務教諭や減る手当などに質問集中 給特法改正案の審議」2025年4月16日
- 先端教育オンライン「改正給特法施行」
- 日本経済新聞「高校無償化の改正法案成立」2026年3月31日
- リセマム「高校無償化改正法」2026年4月2日
- 文部科学省「学校給食費の抜本的な負担軽減」
- リシード「文科省、2026年度暫定予算成立」2026年3月31日
- 教育新聞「共同親権スタート『保護者対応これまで通りが基本』法務省がQ&A」2026年3月30日
- 教育新聞「学校ネットワーク『必要速度』確保6割に 28年度末に95%完了へ」2026年4月1日
- リシード「学校ネット環境が改善、推奨値満たす学校が63.9%に」2026年4月2日
