Weekly教育ニュース(2026年4月20日〜26日)

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家庭でのAI浸透と、学校・政策の制度設計が同時並行で動いた一週間でした。東京都教育委員会の調査で、家庭学習での生成AI利用率が38.0%(前年度から倍増)に達したことが公表されました。衆議院文部科学委員会ではデジタル教科書を正式な教科書に位置付ける学校教育法改正案が可決。中教審の外国語ワーキンググループでも、AI時代を踏まえた学習評価のあり方が議論されています。AIが学校の外で先行して広がる中、学校教育の制度設計がそれにどう応えるかが問われた週でした。

目次

東京都「家庭学習での生成AI利用率38%」公表 1年で2倍以上の急伸

東京都教育委員会は4月23日、令和7年度「児童・生徒のインターネット利用状況調査」の結果を公表しました。都内公立学校102校の児童・生徒約12,000人を対象に、令和7年10月下旬から12月下旬にかけて実施した調査です。家でインターネットを使って学習をするときに生成AIを「使ったことがある」と回答した児童・生徒は全体で38.0%。前年度の16.9%、令和5年度の14.7%から急速に拡大しました。

校種別では、小学校28.1%(前年度13.7%)、中学校51.7%(前年度21.5%)、高等学校61.3%(前年度29.7%)、特別支援学校23.5%(前年度8.7%)となり、すべての校種で前年度から倍増しています。

東京都の調査期間中の2025年11月14日〜19日には、学研ホールディングスの学研教育総合研究所も対話型生成AIの利用について全国調査を実施しました(小学生1,200人、中学生600人、高校生600人対象)。2026年3月12日に公表された学研「白書2025」によれば、対話型生成AIの利用率は小学生36.6%、中学生43.2%、高校生73.7%。東京都と学研は調査の対象や設計に違いはあるものの、ほぼ同時期に別々のチームが独立に取った2つのスナップショットといえます。

校種東京都調査
家庭学習でのAI利用率
学研白書2025
対話型AI利用率
小学生28.1%(n=6,692)36.6%(n=1,200)
中学生51.7%(n=2,377)43.2%(n=600)
高校生61.3%(n=2,014)73.7%(n=600)
特別支援23.5%(n=916)(対象外)

今回の調査を読むと、家庭ではすでに生成AIの活用が大きく前進している一方、学校での導入は小中学校で高校に比べて遅れている構図が見えてきます。ICT教育の普及期にも、家庭のほうが学校より先行する「学校と家庭のデジタルデバイド」が問題になりました。生成AIでも同じ構図が、特に中学校で起こり始めているように見えます。

私が伴走支援している中高一貫校でも、生成AIの導入は「まずは高校から段階的に」進むことが多いのが実情です。段階的導入の王道であり、決して悪いことではありません。ただ、中学生の家庭学習でのAI利用率はすでに東京都51.7%に達しています。小学校は保護者の目があり、高校は学校が動き始めている。中学校はその間で、家庭でのAI利用が浸透している一方、学校での体系的なリテラシー教育が追いつかないリスクが最も高い段階だといえます。家庭でのAI浸透のスピードを考えれば、中学校段階のAIリテラシー教育は、各教育委員会や学校が現場の判断で優先的に対処していくべき課題でしょう。

なお、東京都調査では教員側の動きも明らかになりました。生成AI等を活用して授業準備や教材研究をしている教員が「いる」と回答した管理職の割合は全体85.3%。前年度49.5%、令和5年度29.4%から急速に伸び、高等学校では100%に達しています。一方、授業で生成AIやAIを活用した学習ツールを生徒に使用させている教員は全体で39.2%(小学校34.1%、中学校29.6%、高等学校75.0%、特別支援学校33.3%)にとどまります。教員の校務での活用は全校種で広がっている一方、授業での生徒利用には校種差が大きい構図になっています。

完全デジタル教科書「小4以下と国語・社会・道徳は当面認めず」 衆院文科委が改正法案を可決

衆議院文部科学委員会は4月24日、デジタル教科書を正規の「教科書」として位置付ける学校教育法等の一部を改正する法律案を審議し、賛成多数で可決しました。法案は4月7日に閣議決定され、成立すれば2027年4月の施行、2030年度から小中高校で順次使用される見通しです。

審議で松本洋平文科相は、学習内容を全てデジタルで掲載する「完全デジタルの教科書」について、小学校4年生以下では「認めることは適当ではない」、国語・社会・道徳は「当面認めるべきではない」と述べました。その方針の下では、完全デジタル教科書は今後の教科書検定で申請対象外となり、各社は紙のみの教科書か、紙とデジタルを併用するハイブリッド型のいずれかで申請することになります。文科相は「自分で書き取り、読み取り、引き続き大切にしながら、発達段階や教科に応じてデジタルの良さを取り入れる教育環境の整備に取り組む」と説明しました。

背景には、4月10日に文科省の有識者会議で着手した「デジタル教科書の制作・使用に向けた指針」の議論があります。指針は今秋までに策定予定で、認知科学や発達心理学などの知見を踏まえ、使用の開始学年や教科の目安を明記する方針です。デジタルは情報量が多く児童生徒の負担になる、紙の方が記憶が定着しやすいといった懸念が踏まえられています。

紙とデジタルにはそれぞれの特性があります。デジタルは動画や音声、アクセシビリティ機能を活用でき、英語や理科のように音声・映像を用いる教科と相性がよいとされています。紙は一覧性があり、長文読解や記憶の定着で強みがあると言われています。学び方や教科特性、子どもの状況によって最適な手段は変わるからこそ、ハイブリッド型を基本としつつ、学校現場が柔軟に組み合わせていく姿勢が現実的でしょう。

外国語WG第11回 学習評価のスリム化+CEFR参照拡充+「AI時代の意義再定義」を論点に

中教審教育課程部会の外国語ワーキンググループ第11回会合が4月23日に開催され、配布資料1「学習評価の在り方」等を中心に議論が行われました。

学習評価については、現行で各学校が作成している「内容のまとまりごとの評価規準」を国が「評価規準例」として示し、各学校での作成は不要とする方向が提示されました。外国語は引き続き5領域(聞くこと、読むこと、話すこと(やり取り)、話すこと(発表)、書くこと)で評価する方針です。これは4月6日号で取り上げた業務量管理計画と同じ流れにあり、教員の評価業務負担を国が引き取って軽減する設計といえます。

CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)については、改訂で領域別目標の要素を「内容」に移し、CAN-DO形式(外国語を使って何ができるようになるか)で示すことで、より参照しやすい構造になります。文科省のCBTシステムMEXCBTでCEFRを参照した問題を拡充し、AIを活用したパフォーマンステストツールの可能性も検討する方針です。

CEFR活用について、教育新聞によれば、会議では「CEFRはグローバルな能力を測定するには適しているかもしれないが、定期考査など細かい発達を測るには適していないのではないか」と、日常的な評価における基準設定の重要性を指摘する声も出されました。一方で、外国語教育の本丸はグローバルなコミュニケーション能力の育成にあります。CEFR参照はその文脈に直結する議論であり、日々の発達把握とグローバル基準の参照は、別の軸として両立させる余地もあるでしょう。

なお、WGの検討事項には「AI時代に外国語を学ぶ意義の再定義」「AI時代の教師・ALT等の役割の再定義」も掲げられています。さらに資料では「現行の学習評価プロセスの示し方の課題」として、「一人一台端末の普及や生成AIの発展等を踏まえた学習評価活動の進化を十分に織り込めていない」という指摘も明記されています。今後の外国語WGの議論が次期学習指導要領にどう反映されていくか、注目していきたいと思います。

全国学力テスト4/23一斉実施 中学英語が初CBT、来年度から全面移行へ

文部科学省は4月23日、令和8年度全国学力・学習状況調査を実施しました。小学6年生の国語と算数、中学3年生の国語と数学はPBT(筆記方式)で一斉実施され、4月8日時点の参加校は小学校18,325校、中学校9,542校。前号でお伝えした参加率97.5%という規模で行われました。中学校英語はCBT(コンピュータ使用型)で4月20日から5月29日にかけて分散実施され、CBT初導入となります。来年度(令和9年度)からは全面CBT化が予定されており、紙の冊子による出題は今回で区切りとなります。

【情報源】

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著者

AI教育コンサルタント / 株式会社FlipSilverlining 代表取締役 / 守谷市生成AI活用推進プロジェクトアドバイザー
自治体のAI教育アドバイザーや私立中高の教育コンサルとして学校現場に入りながら、AI時代の教育について書いています。著書3冊(明治図書)、教員研修・講演120回以上、授業視察1,000回以上。

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