通知表の所見、保護者メールの返信、授業スライド作成。どれも神経と時間を使う校務です。
「AIで楽になるらしい」と聞いてはいるけれど、何から手をつければいいか分からない。ポッドキャスト「先生のためのAIラジオ」第5回では、現役教師のあきお先生と一緒に、校務活用ベスト3を掘り下げました。
60点の叩き台がすぐ出れば、校務は楽になる

最初に共有しておきたいのは、生成AIの出力に100点を求めないことです。完璧なものを期待するのではなく、60点の叩き台が数秒〜数分で出てくる。それだけで校務はぐっと楽になります。
最近のAIはこちらのプロンプトがあいまいでも、逆にヒアリングしてくれるほど進化しました。難しいテクニックは必要ありません。今回紹介するのは、明日からすぐに試せる活用です。
1. 通知表の所見・指導要録
書いたことのある先生ならよくわかる、所見の重さ。30〜40人分を1週間かけて仕上げてきた先生も多いはずです。
あきお先生は今年度、スプレッドシートを使った一括生成のやり方を試しました。生徒の成績・部活・学習意欲・所感などをまとめて添付し、プロンプトはシンプルに次の型でいけます。
あなたはベテランの教職員です。添付の生徒データをもとに、あたたかみのある通知表の所見を作成してください。
条件:
・【学年】の生徒
・1人あたり【〜文字】程度
・生徒がポジティブに感じられる内容にする
・ネガティブな要素は含めない
ポイントは「あたたかみのある」のような雰囲気指定です。AIの出力は堅い文章になりがちで、ここの一言がトーンを大きく左右します。スプレッドシートの備考欄に個別のエピソードや性格の特徴を入れておくと、AIがそれを織り込んだ所見を返してくれます。
複数人を一括処理すると後半の生徒で表現が似通ってくることがあるので、最終的なニュアンス調整は1人ずつ確認しながら行う前提で、叩き台として使うのがおすすめです。
なお、成績データは学校の機密情報です。AIに読み込ませる前に、必ず学校長や教育委員会の許可を得てください。
2. 保護者メール返信
メールを書くのに苦手意識を持っている先生ほど、効果を実感しやすい校務活用です。あきお先生は「精神的な負荷が相当和らいだ」と話していました。
プロンプトの型はこちらです。
あなたはベテランの教職員です。以下の保護者メールに対する、丁寧でわかりやすい返信案を作成してください。
保護者からのメール:
【ここにメール本文を貼り付け】
返信で伝えたい要点:
【箇条書きで記入】
返信の雰囲気:
【例:保護者の不安に寄り添う感じで、毅然と伝えたい、柔らかめに】
ポイントは「返信の雰囲気」の一言です。「保護者の不安に寄り添う感じで」「毅然と伝えたい」「柔らかめに」と切り替えるだけで、出てくる文章のトーンが大きく変わります。AIは丁寧すぎる文章を出しがちなので、ここの指定が現場のコツになります。
このプロンプトを「強めパターン」「柔らかめパターン」のように複数用意してメモに残しておくと、状況に応じて呼び出すだけで使えるようになります。AIに8割作ってもらい、語尾や言い回しだけ自分の言葉に整える、というのが運用ノウハウです。

3. 授業スライド作成
生成AIでスライドを作ってみたけれど、出てきたものがイマイチで、しかも手直しできなくて諦めた。そんな経験のある先生も多いのではないでしょうか。
実は今、その「手直しできない」問題は解決しています。Geminiで作ったスライドはGoogleスライドにエクスポートできるようになり、文字も画像もそのまま編集できます。ファイルメニューからパワポ形式でダウンロードすることも可能です。
品質を上げる最大のコツは、いきなりスライド生成に入らないこと。先にテキストで構成案を作る2段階構造を取ります。
【ステップ1:スライド構成案の生成】
ツールメニューから「Canvas」をオンにしてから実行します。
あなたはベテランの教職員です。以下の概要と添付資料を参考に、授業スライドの構成案を作成してください。各スライドの見出しと要点を箇条書きで出してください。
校種・学年:【例:小学4年生】
教科:【教科名】
単元:【単元名】
伝えたい内容:【具体的な内容を記入】
スライド枚数:【〜枚】程度
【ステップ2:スライド生成】
あなたはベテランの教職員です。上記のスライド構成案をもとに、生徒にとって見やすくわかりやすい授業スライドを作成してください。
生成されたスライドは、キャンバス画面右上の「スライドにエクスポート」ボタンでGoogleスライドへ。背景や画像の差し替えなど、細かな調整は口打ち(チャットでの追加指示)でも、エクスポート後にGoogleスライド上で直接編集することもできます。
これまで1コマの授業スライドに数時間かけていた先生も、土台が一気に作れるようになることで、かなり時短になります。

浮いた時間を、先生にしかできないことに
生成AIの出力に100点を求めない。60点の叩き台で十分だと割り切る。そう考えて使い始めると、所見も保護者メールも授業スライドも、これまでとは違う速度で動き出します。
浮いた時間を、先生にしかできないことに使いましょう。それが校務活用の本当の価値ではないでしょうか。

番組を聴く
「先生のためのAIラジオ」#05 はこちらからお聴きいただけます。
