面談の希望日を集めて、自分の予定と見比べながら、組み合わせを探していく。2、3日がかりのこの日程調整を、番組パーソナリティのあきお先生はこの夏、自作のアプリで自動化していました。
プログラミングが本職というわけではなく、物理を教える現役の先生です。ポッドキャスト「先生のためのAIラジオ」第22回は、趣向を変えて台本なしのライブ収録。夏休みに作った5つのアプリについて、開発の裏側までたっぷり聞きました。
夏休みに生まれた5つのアプリ

5つのアプリはどれも、現場の困りごとから生まれています。
1つ目は、授業時間数のカウンター。学校のGoogleカレンダーと連携して、中間テストまでこのクラスはあと何時間あるかを自動で数えてくれます。これまでは手で数えるしかなかったものです。
2つ目が、冒頭に挙げた保護者面談の日程調整です。先生の空いている枠を保護者に送り、返ってきた希望をAIが組み合わせて、確定の連絡まで届ける。この流れを1つのアプリにまとめました。2、3日がかりだったマッチングは、AIに任せると一瞬だったそうです。

さらに、間違えやすい物理法則をAIと一緒に50問作り、正答率の集計までできる選択式の小テストアプリ。CSVを読み込むと、散布図と回帰直線、相関係数が一度に出てくるデータ分析アプリ。一人ひとり違うPDFを、その生徒にだけメールで届ける配信アプリ。どれも学校のGoogle環境の中で動いています。
ハードルは想像よりずっと低い

アプリ開発と聞くと、専門家の仕事に思えるかもしれません。しかし、あきお先生が実際にやっていたのは、AIとの対話が中心でした。
まず「こういうものが欲しい」とAIに伝える。するとAIの側から「こうしたらどうですか」と提案が返ってくる。形にするのはAIに任せて、出来上がったものを人間が確かめる。こうしてAIと対話しながらアプリを作るやり方は、バイブコーディングと呼ばれています。
これは、番組で以前紹介した「上流・中流・下流」の分担そのものです。何を作るかを決めるのは人間。作るのはAI。確かめて責任を持つのは、また人間です。プログラミングの知識よりも、「何を作るか」という発想が主役になるのです。
もちろん、一発で完璧なものはできません。微修正を繰り返すうちに、AIの出力が崩れていくこともあります。そんなときの立て直し方は、番組の聴きどころの1つです。
作って、使ってもらって、育てる
出来上がったアプリを、あきお先生はまず同僚の先生たちに使ってもらいました。すると「一緒に組んでいる先生の授業進度も見たい」という要望が返ってきて、さっそく共有機能を追加しているところです。評判は上々で、「どうやったらこんなのが出来るんですか」と聞かれるまでになりました。ゆくゆくは、全校の先生に使ってもらうことも考えています。
1人で黙々と作り込むのではなく、早めに使ってもらい、声を聞いて改善していく。ソフトウェア開発の世界で鉄則とされてきたこのループが、職員室で自然に回り始めているわけです。使う人の声で、アプリは育っていくのです。
「DXじゃなくてAX」

番組の中で話題になったのが、AXという言葉です。AIで働き方や仕事の進め方を変えていく、という考え方を指します。あきお先生は研修でこの言葉を知って、まさに自分のやっていることだと感じたそうです。
象徴的なエピソードがあります。いろいろな学校の先生が集まって、アプリを1つ作る研修でのこと。あきお先生のグループでは、5人のうち3人が面談調整のアプリを作っていました。困りごとは、どの学校も同じなのです。
こうした話を聞くと、起業家としてはつい、製品にして売り出すことを考えてしまいます。しかし、AI時代の強みは、現場を一番よく知る先生が、自分の困りごとを自分の手で解決できてしまうことにあります。研修などでお伝えしている「校内にAI人材を育てる」ことの意味も、まさにここにあるのです。あきお先生自身、「これ、他の先生も使ったら、絶対学校が良くなる」と話していました。作れる先生が校内に1人いる。それだけで、学校は変わり始めるのです。
番組を聴く
現場の困りごとを、現場の先生が自分の手で解決する。その入り口は、想像よりずっと近くにあります。
記事でお伝えしたのは、5つのアプリの姿までです。番組では、誤送信を防ぐ設計の工夫、AIが迷走したときの立て直し方、そしてAI同士に議論させる最前線の開発術までを、「学校の教員なのに何やってんだろうな」という笑いも交えながら話しています。
「先生のためのAIラジオ」#22 はこちらからお聴きいただけます。
