通信制高校、新基準で生徒80人に教員1人以上となった背景

月曜日のweekly教育ニュースでも紹介しましたが、2023年度から通信制高校に対して「生徒80人当たり教員1人以上」という基準が新設されます。この新基準が導入されることとなった背景をまとめましたので、興味のある方はご覧ください。


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背景

まず通信制高校の市場規模ですが、高校全体(全日制・定時制)の生徒数287万6,251人に対し、通信制高校の生徒数は23万8,314人と約8.3%です。ただし通信制高校の割合は年々増えており、2021年度は21万8,389人で約6.8%でした。(令和4年度学校基本調査より)

市場規模の拡大が特に顕著だったのが、N高等学校・S高等学校をはじめとする大規模私立校です。2022年6月30日時点でN高・S高の生徒数は両校合わせて22,267名となり、通信制高校でもトップシェアを誇っています。

そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのN高・S高ですが、2021年5月に『「教師1人で150人担任」が当たり前の超過酷職場』といった報道が流れ、各方面から問題視されるようになります。以下が報道に対するN高・S高の回答です。

2021年5月24日に掲載されました一部報道に関しまして、当学園の見解をご説明させていただきます。

当該記事においてN高等学校(以下、当校)が 『「教師1人で150人担任」が当たり前の超過酷職場』と表現されており、大変困惑しております。

当学園のネットコースにおいて、1・2年次の生徒を受け持つ教員の1人あたりの担任数は150人を標準、3年次生を受け持つ教員の担任数は80人を標準としております。この教員の担当生徒数につきましては、高等学校通信教育規程ならびに沖縄県私立高等学校通信制課程の認可に係る審査基準に従って、当学園で決定したものです。

全日制の高校では、教師1人あたりの目標受け持ち数が40人となっており、それに比べると多いように見えるかもしれません。しかしながら、通信制高校の当校ではオンライン授業を取り入れており、教員が日々の授業を自ら行うわけではありません。教員の授業の担当は生徒1人あたり1年間に5日間程度のスクーリング時のみとなっております。

https://nnn.ed.jp/news/blog/archives/12828.html

この事件で注目されたのが「教師1人あたりの生徒数」です。「全日制高校では教師1人あたり生徒40人」ですが、通信制高校ではどうなっているのでしょうか。高等学校通信教育規程によると、

(教諭の数等)

第五条 実施校における通信制の課程に係る副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭及び教諭の数は、五人以上とし、かつ、教育上支障がないものとする。

 前項の教諭は、特別の事情があり、かつ、教育上支障がない場合は、助教諭又は講師をもつてこれに代えることができる。

 実施校に置く教員等は、教育上必要と認められる場合は、他の学校の教員等と兼ねることができる。

となっており、「教師1人あたりの生徒数」については基準がありません。

そこで令和4年度学校基本調査のデータを使って通信制高校の「教師1人あたりの生徒数」を調べてみました。日本全体で平均すると「教師1人あたり生徒41.8人」となっており、全日制高校と比べてさほど変わりません。都道府県別でみると、一番多いところで愛知県の「92.4人」でした。

区分学校数生徒数教員数教員1人当たり
全学校126238,3145,70041.8
公立654,6211,48336.8
私立120183,6934,21743.6
北海道522,83478429.1
青 森08084617.6
岩 手01,3344629.0
宮 城25,74315437.3
秋 田05482027.4
山 形11,1144226.5
福 島13,4468540.5
茨 城824,90329484.7
栃 木12,38612219.6
群 馬01,3984332.5
埼 玉105,61415037.4
千 葉810,40531632.9
東 京410,41623644.1
神奈川55,01113537.1
新 潟32,7989031.1
富 山08571847.6
石 川11,0112934.9
福 井18412533.6
山 梨04,2126465.8
長 野97,04819136.9
岐 阜52,80111025.5
静 岡12,4477333.5
愛 知29,0599892.4
三 重74,81012538.5
滋 賀21,3755127.0
京 都22,68311722.9
大 阪1116,83932951.2
兵 庫45,88112049.0
奈 良38,74120343.1
和歌山11,6295430.2
鳥 取03652018.3
島 根01,8423552.6
岡 山35,9258668.9
広 島52,91710128.9
山 口24,5506174.6
徳 島01941512.9
香 川31,3636122.3
愛 媛33,78011333.5
高 知05904214.0
福 岡23,9727751.6
佐 賀08792633.8
長 崎11,5725628.1
熊 本43,44311131.0
大 分11,2483436.7
宮 崎01,1785720.7
鹿児島112,63627945.3
沖 縄422,86835664.2

以上のことから、今回の「生徒80人当たり教員1人以上」という新基準は、N高・S高などの一部のマンモス通信制高校に対する規制だということが分かります。N高・S高などは収益モデルを見直す必要に迫られるため、影響は小さくないでしょう。

ただし今回の基準はあくまで「学校全体」の話です。学校内部で「担任1人が生徒何人を受け持つか」は学校に裁量があるため、『「教師1人で150人担任」が当たり前の超過酷職場』といった環境の改善に繋がるかは定かではありません。今後、通信制高校に対して新たな新基準が導入されるか注目したいと思います。