(承前)前回の続きです。プログラミング教育が必修化された背景には、第4次産業革命とIT人材不足があります。保護者・教員の立場として頭によぎるのが「プログラミングを学んでおけば、子供の将来は安泰かもしれない」という考えでしょう。実は「プログラミングを使った仕事」の中には、生涯仕事に困らないような仕事もあれば、誰にでも出来る専門性の低い仕事や自動化AIに代替されてしまうような仕事もあるのです。プログラミング教育に興味のある保護者や教員の方は、「将来有望なプログラミングの仕事」と「価値が下がっていくプログラミングの仕事」の見分け方を知っておいた方が良いでしょう。今回はまず、「誰にでも出来る専門性の低いプログラミングの仕事」について見ていきましょう。
IoTロボットキッチンが普及した未来
「誰にでも出来る専門性の低いプログラミングの仕事」をイメージできるように、以前に紹介したIoTロボットキッチンに登場してもらいましょう。
十数年後の未来を想像してみましょう。一般の家庭には、インターネットに繋がった冷蔵庫・食洗機・キッチン一体型のロボットキッチンが普及しているでしょう。ロボットキッチンの普及率は、今の自動食洗機と同じぐらいでしょうか。料理を自分で作る日もありますが、仕事で疲れた日などはボタンひとつでロボットキッチンが料理を作ってくれて、出来立てホヤホヤの夕飯が食べられます。共働きだと嬉しいですね。
上記のYouTubeの動画ではプロの料理人が料理の作り方をロボットキッチンに教えていましたが、十数年後のコモディティ化したロボットキッチンではプログラミングで料理のレシピを登録しているでしょう。カレーライス、餃子、チャーハン、ナポリタンなどの簡単な料理なら、次のようなブロックを使ったビジュアルプログラミングで手軽にレシピ登録ができます。
レシピサイトの変化
このようなIoTロボットキッチンが普及した未来では、クックパッドのようなレシピサイトの役割も今とは大きく変わっているでしょう。今のレシピサイトは人間が料理をするためのサービスですが、十数年後にはロボットキッチンが料理をするためのサービスにシフトすることになります。つまり、人間が読みやすいテキストと写真のレシピ集ではなく、ロボットキッチンが読み込める料理のプログラミング集に変化するのです。
未来の私たちは、ロボットキッチンのディスプレイからレシピサイトの料理を検索します。冷蔵庫にある食材でフィルタリングされた料理の一覧から、その日に食べたい料理をタップすれば、あとはロボットキッチンが作ってくれるのを待つだけ。もちろん、事前に食べたい料理レシピを選んでおけば、必要な食材はインターネットに繋がった冷蔵庫が自動で注文しておいてくれる機能もあります。第4次産業革命後は、このような生活になるでしょう。
誰にでも出来る簡単なお仕事
さて、クックパッドのようなレシピサイトが、ロボットキッチンに対応した新しいレシピサイトに移行するには、大量のレシピをプログラム化する作業が必要です。レシピを読んでブロックを並べるだけの簡単なお仕事です。レシピサイトは大量のアルバイトを雇って、この作業を押し進めるでしょう。(この作業自体を自動化するプログラムを作れないこともないですが、アルバイトを雇った方がコストが安い場合は外注するでしょう。)
これが「誰にでも出来る専門性の低いプログラミングの仕事」のイメージになります。このようなプログラミングの仕事が、IoT製品の周りでたくさん生まれてくるでしょう。(専門用語でいうとDX・デジタルトランスフォーメーションに必要な作業になります。第4次産業革命において一時的に発生するタイプの仕事です。)
そして、小学校のプログラミング必修化にあたり、学習指導要領で定められる最低限の水準は「誰にでも出来る専門性の低いプログラミング」のレベルなのです。このレベルのプログラミングを学んだとしても、「将来仕事に困らない」なんてことはあり得ません。「子供にプログラミングを学ばせたい」と考えている保護者や、授業でプログラミングを扱うかもしれない教員は、そのことをちゃんと理解しておきましょう。
次回は「自動化AIに代替される仕事」について考えていきたいと思います。(続く)
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