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プログラミング教育と脱工業化社会(11)AIに代替される仕事の見分け方

(承前)前回の続きです。プログラミング教育が必修化された背景には、第4次産業革命とIT人材不足があります。保護者・教員の立場として頭によぎるのが「プログラミングを学んでおけば、子供の将来は安泰かもしれない」という考えでしょう。実は「プログラミングを使った仕事」の中には、生涯仕事に困らないような仕事もあれば、誰にでも出来る専門性の低い仕事や自動化AIに代替されてしまうような仕事もあるのです。プログラミング教育に興味のある保護者や教員の方は、「将来有望なプログラミングの仕事」と「価値が下がっていくプログラミングの仕事」の見分け方を知っておいた方が良いでしょう。今回は、「AIに代替される仕事の見分け方」について見ていきましょう。


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AIに代替される仕事の見分け方

AIに代替される仕事の見分け方のポインは2つあります。昨日の「AIは準備が大変」でも書きましたが、ひとつは労力(コスト)で、もうひとつは大量のデータです。

ある仕事をAIで代替するには、その準備に大きな労力(コスト)が必要になります。大量のデータを集める労力、それをAIが理解できるようにデータ整形する労力、そしてAIを調整(チューニング)する労力などです。これらの大きな労力(コスト)に見合うリターン(成果)が期待できることが、AIを導入する際の一つ目の条件です。

AI導入の二つ目の条件となるのは、大量のデータです。AIはどんな仕事でも代替できるわけではありません。AIがAIとして機能するためには、その仕事に関して大量のデータが必要不可欠です。仕事に関連するデータが少なかったり、データ取得が難しいような業界では、AIの活用は難しくなります。

整理すると、AIで代替できる仕事は、①大きな労力に見合うリターンが期待できて、②大量のデータが用意できる仕事、となります。この条件を一言で表現すると、「工業化社会の仕事」です。

工業化社会の仕事が代替される未来

工業化社会のコード(考え方)は、規格化・分業化・同時化・集中化・極大化・中央集権化です。工業化社会の仕事は極大化・集中化しているため、AIで代替された場合にリターン(成果)が大きくなります。また、工場のように規格化されている仕事は、それに関する大量のデータを収集しやすい性質があります。工業化社会の仕事は、AIで置き換えるのに最適な条件を満たしているのです。

AIやロボットに代替される仕事を「奪われる仕事」と呼ぶことがあります。この表現には「自分の仕事が奪われてしまう」というネガティヴな文脈が含まれていますね。しかし、将来AIやロボットに仕事を肩代わりされることは、そんなに不幸なことなのでしょうか。

現在の日本の総人口は約1億2644万人、そのうち15歳から64歳の生産年齢人口が占める割合は59.7%(約7545万人)です。これが2060年になると、総人口は今の総人口の約70%、生産年齢人口に至っては今の生産年齢人口の約60%まで下がります。日本の人口減少は避けられない未来のひとつです。

そんな中、子供たちが大人になる未来において、社会が今と同じぐらい豊であるためには人口減少した分を補う労働力が必要です。その役割を期待されているのが、実はAIやロボットなのです。

将来、AIやロボットが「旧時代の工業化社会の仕事」を代替していくでしょう。そして、今の子供たちが大人になって就く仕事は、個性化・統合化・非同時化・分散化・適正規模化・地方分権をコードとする脱工業化社会の仕事になります。

脱工業化社会での常識は、今の工業化社会の常識とは違います。例えば、働く時間が非同時化した「働き方改革」や、オンラインでリモート化した「働く場所改革」、働くモチベーションが個性化した「働きがい改革」などが当たり前の社会。そんな時代を、今の子供たちは生きていくことでしょう。(続く)