(承前)「Society5.0は脱工業化社会」の最終回です。社会には工業化社会、修正工業化社会、真の脱工業化社会の3つのステージが存在します。そして脱工業化社会の推進派は、「『修正工業化社会』を目指す勢力」と「『真の脱工業化社会』を目指す勢力」に分かれます。教育業界が脱工業化社会を迎えるためには、推進派の中でも「真の脱工業化社会」を目指す勢力が増えていくこと重要になります。この勢力は、どうしたら増えるのでしょうか?その鍵を握っているのが、Z世代の生徒たちです。
Z世代が大人を動かす
前回紹介したように、Z世代の生徒たちが活躍する兆しは、日本でも確実に現れています。Z世代の生徒たちが育ち始めている学校は、工学院や八雲学園、聖学院、静岡聖光、文杉、和洋九段女子などです。これらの学校に共通している点は、「『真の脱工業化社会』を目指している学校」であることです。Z世代の生徒たちは、新しい時代の教育観のもとでしか育ち得ないのでしょう。
Z世代の生徒たちの中には、グレタさんのように国際社会で大人を動かせる人もいるでしょう。しかしグレタさんほどに成熟していなくとも、Z世代の生徒たちには「大人を動かす力」があります。
Z世代の生徒たちの活躍を目にして、一番に驚くのは教員と保護者です。最初は「新しい時代の教育」に半信半疑だった大人たちも、実際に日々成長していく生徒の姿を目にすると、「この教育で良かったんだな」と価値観が変わっていきます。Z世代の生徒たちの活躍と成長が、大人の価値観を動かすのです。このようにして、その学校コミュニティは「脱工業化社会の推進派」として以前よりも勢力を増すことになります。
ポテンシャルの山を越えるために
真の脱工業会社会と工業化社会・修正工業化社会の間には、大きなポテンシャルの山が存在します。教育業界全体が真の脱工業会社会になるためには、この山を越えるための大きなエネルギーが必要です。
この社会的エネルギー源の候補は、体制の崩壊や革命などが考えられます。歴史を振り返ると、フランス革命しかり、明治維新しかり、です。しかし現代の日本において、これらの争いの選択肢は避けたいですよね。それではどうすれば良いのでしょうか。私は「保護者と子供たち」こそが、この社会的エネルギーの担い手だと考えています。
今、教育業界では「工業化社会の維持派」と「脱工業化社会の推進派」が綱引きをしている状況です。この綱引きの主なプレイヤーは学校と教員です。そして保護者と子供たちの多くは、半ば無意識的に所属している学校の勢力に加担する構図になっているのです。
もしも保護者が「個別最適化の教育をしてください」と学校に言ったら、どうなるでしょうか。もしも子供が「先生が一方的にしゃべるだけの授業は受けたくない」と声をあげたら、どうなるでしょうか。一人一人の声は小さくとも、それらが集まることで大きな声、すなわち大きなエネルギーになります。そして、時代の流れに沿ったことは、人が集まれば必ず動くのです。集まった大きなエネルギーは”うねり”となって、ポテンシャルの山を越えていくことでしょう。
この”うねり”自体は、実は既に起こり始めているのです。中学入試において多種多様な特別入試(従来の四科以外での入試)が増えているのも、この”うねり”による現象です。メディアでは大きく取り上げられていませんが、ここ数年で海外大学進学希望の高校生と保護者が増えているのもそうでしょう。変化は既に始まっているのです。
保護者と教員の方には、新しい時代の流れを見極めて欲しいと思っています。子供の幸せに繋がる教育はどれなのか、悔いのない判断をして欲しいと願っています。10年後20年後ではなく、50年後60年後の子供の幸せです。そのために必要な情報は、このブログでも発信していきたいと思っています。みんなで一緒に子供たちの未来を明るく照らしていきましょう。(了)