【本紹介】限界費用ゼロ社会

先日、オードリー・タンの提案する「新しい民主主義」についてブログで紹介しました。この「新しい民主主義」の概念の要は、選挙をデジタル化することで限界費用をゼロにするということでした。このように「限界費用をゼロにする」という考え方は、未来社会を予測するうえで大変重要な観点になります。

そこで今日は、様々なモノやサービスが限界費用ゼロになった時に、どのような未来社会が訪れるかを予測した書籍を紹介したいと思います。分厚い本なので読むのは大変ですが、今後の社会について考えていく上で必読の一冊です。おすすめします。


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書籍紹介

目次は以下の通りです。

第1章 市場資本主義から協働型コモンズへの一大パラダイムシフト

第I部 資本主義の語られざる歴史
 第2章 ヨーロッパにおける囲い込みと市場経済の誕生
 第3章 資本主義と垂直統合の蜜月
 第4章 資本主義のレンズを通して眺めた人間の本性

第Ⅱ部 限界費用がほぼゼロの社会
 第5章 極限生産性とモノのインターネットと無料のエネルギー
 第6章 3Dプリンティング――大量生産から大衆による生産へ
 第7章 MOOCと限界費用ゼロ教育
 第8章 最後の労働者
 第9章 生産消費者(プロシューマー)の台頭とスマート経済の構築

第Ⅲ部 協働型コモンズの台頭
 第10章 コモンズの喜劇
 第11章 協働主義者は闘いに備える
 第12章 インテリジェント・インフラの規定と支配をめぐる争い

第Ⅳ部 社会関係資本と共有型経済
 第13章 所有からアクセスへの転換
 第14章 社会関係資本のクラウドファンディング、民主化する通貨、人間味ある起業家精神、労働の再考

第Ⅴ部 潤沢さの経済
 第15章 持続可能な「豊穣の角(つの)」
 第16章 生物圏のライフスタイル

限界費用ゼロ教育と教育格差

第7章の「MOOCと限界費用ゼロ教育」は、教育関係者にとって大事な内容になります。限界費用ゼロ社会は2015年に出版された本なのでMOOCなどの情報は少し古いですが、限界費用ゼロ教育の本質を理解することは十分可能です。

デジタル化が進むことで教育の限界費用がゼロになることで、グローバル社会と日本の社会がどのように変化するのかは大変興味があるところです。

一番の期待は、やはり教育格差の是正でしょう。

インターネットの普及と新しい教育サービスによって、貧しい世帯も無料で良質な教育が受けられる時代が来るのでは、と期待されています。代表的な例はMOOCやカーンアカデミーですね。

発展途上国では、教育格差の是正は大いに期待できます。では日本の教育はどうなるでしょうか?

完全インターネットにあるN高・S高などの広域通信制学校や、ICTの導入に積極的な私立学校は、限界費用ゼロ教育の恩恵に預かることができます。しかし、多くの公立学校の現状をみていると、どう転ぶかは分かりません。

来年春には公立小学校・中学校で1人1台のICTデバイスが99%整備される予定だそうです。しかし、学習時の使用率は何パーセントになるでしょうか。不安があります。

ICTの普及によって、日本の貧しい世帯にも教育の機会が得られるようになるのは間違いありません。しかし日本全体の公立学校を俯瞰してみると、教育格差は広がる方向に進む可能性があります。

そのようなことを、この書籍「限界費用ゼロ社会」を久しぶりに読み返して考えていました。