【本紹介】育成の本質〜才能が開花する環境のつくり方

これから教師の役割は、知識を教えるティーチングから、生徒集団を導くコーチング・ファシリテーション・チームマネージメントに軸足が移ると考えています。ここ数年は心理学やファシリテーション、マネージメントの本を多めに読むようにしています。今日紹介するのは、そんな一冊です。

本のタイトル「サッカーとビジネスのプロが明かす育成の本質」とあるように、この本はサッカーの育成のプロ(菊原志郎氏)とビジネスのプロ(中山進也氏)の2人による本です。サッカークラブの育成の事例が中心ですが、その内容は本質的で、「個の育成」と「組織の育成」を仕事にしている人(つまり先生)にとって大変参考になる内容でした。おすすめです。


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書籍紹介

目次は次の通りです。

  1. 天才の育ち方
  2. 強いチームを育む組織文化
  3. 個の育成①−伸びる子と伸びない子の違い
  4. 個の育成②−自走人の増やし方
  5. 「個を伸ばす指導者・保護者」と「個をつぶす指導者・保護者」の違い
  6. グローバル時代の育成
  7. サッカーから学んだことを通して幸せになる

この本の魅力を伝えるために、印象的だったフレーズをいくつかピックアップして紹介したいと思います。

  • 育成と言うのは、もし僕らがいなくなっても良い文化が残るような指導が大事です。だから、コンセプトを伝えられる人をコーチに置くことが何より大事だと思っています。
  • 技術が高いことに依存して選手に言うことを聞かせるスタイルだと、そのうち失敗します。子供たちは「考え方がわからない」ので、原則となる考え方を伝えられないと成長していかないからです。
  • 「困難を乗り越えて、最後はみんなで力を合わせてことをなす」みたいな映画を見て、そのあと、みんなでディスカッションをしました。(中略)映画で意見を話し合う習慣がついたことで、その後は子供たちだけで夜に集まって、自分たちのプレー映像を見ながら話し合いができるようになってきました。
  • 振り返りをやるときに、「反省会をやろう」と言う人がいます。まず大事なのは、振り返りを「反省会」にしないことです。そのネーミングにするだけで、うまくいかなくなる確率が高まってしまいます。
  • 得意なことを伸ばすと言うのはすごく大事なことではあるんですが、一方で、「得意なことだけやっていけばいいよ」だと、それこそさっきの話の「いろいろなことをやってみると、あとでムダなくつながってきたりする」というチャンスを失うことになりますよね。
  • 損得を考えて損しないようにすると、結局損する
  • コーチの側としては「評価と言うより「正しくフィードバックをする」と言う意識の方が良いと思います。(中略)お互いにフィードバックしあって、リクエストを伝えて、アイディアをすり合わせて試行錯誤すると言うのを繰り返していると、「評価に納得がいかない」と言う状況はあまり起こらないんです。
  • 教えたくなるのは、知識量が中途半端に少ない時だと思います。そういう時って、持っている知識を全部出したから。逆に知識が多い人は「全部を教えられない」と悟っているから、相手の準備ができたときに必要なことを伝える感じになります。
  • 決して意味のある行動では無いですが、保護者や指導者などの大人から逃げ場のない聞き方をしたら、やはり子供は何とか自分を守りたいと言う気持ちが生まれて、このような言い訳をしてしまいます。これは子供が悪いのではなくて、子供を追い詰めるような聞き方をする大人が悪いんです。
  • そうやって、その後うまく問題解決できるようになると、子供は「こうやればいいんだ」と一つ学んで自信がつきます。自分で考えて実行したことで得られる自信は、人から指図されてついたそれとは比べ物にならないほど大きいんです。

上記の言葉にピンときた方は、ぜひ本をご覧ください。いろいろな気づきがあると思います。

チームの成長ステージ

この本の内容で私が「なるほど!」と一番感心したのが、チームの成長ステージを表現した「イモムシ・チョウ理論」です。この考え方は、学校のクラス作りやオンラインコミュニティ運営、プロジェクト発足など様々な分野に適応できると感じました。

「グループ」が「チーム」へと成長するには、グループ期・カオス期・チーム期の3つのステージを経ることになります。上記の図には書かれていませんが、それぞれのステージの間には壁が存在します。グループ期とカオス期の間には「心理的安全の壁」が、カオス期とチーム期には「成功体験共有の壁」があります。これらの壁を乗り越えていくことで、グループはチームへと成長するのです。

「イモムシ・チョウ理論」はこちらの記事で詳しく書かれていますので、興味のある方はご覧ください。