学校再開後の授業時数についての文部科学省の考え

昨日、萩生田文部科学大臣が興味深い記者会見を行いました。こうした会見を見ていると、文部科学省が現時点でどのように考えて動いているのかを垣間見ることができます。個人的に興味深かったのは「学校再開後の授業時数」についてです。今日はその点について紹介したいと思います。


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今回は比較的短い会見でしたね。「学校再開後の授業時数」については最初の5分で語られています。ポイントとなる部分(2:15以降)を文字起こしした文章を載せておきますね。(文字起こしが簡単にできるのはUDトーク様様です!)

このように児童生徒の学習を保障するため、まずは各学校において可能な限りの措置を講じていただくことが不可欠ですが、一方で、臨時休校が長期化した場合においては再開後の授業の中で、学校で指導していない内容全てを指導することがどうしても難しく、教育課程の実施に支障が生じるような事態も考えられます。

こうした事態に備え、学校が課した家庭学習の学習状況および成果を確認した結果、十分な学習内容の定着が見られ、再度指導する必要がないものと学校が判断した場合には、特例的に学校の再開後等に当該内容を再度学校における対面指導で取り扱わないこととすることができる、としております。

この場合であっても学習内容の定着が不十分な児童生徒に対しては別途個別に補習を実施する、追加の家庭学習を課す、など必要な措置を講じるよう依頼をしているところです。

実は4月10日にも会見があったのですが、その時よりも簡潔にまとめられています。ポイントは、「家庭学習を指導」→「学習内容の定着を評価」→「定着が確認できれば授業は不要 or 定着が確認できなければ補習授業や追加の家庭学習」となります。

ほとんど全ての学校は何らかの家庭学習を既に指導していると思います。もちろん、それがオンライン授業なのか授業動画の配信なのか宿題プリントなのか、学校によって差はあるでしょう。しかし文部科学省の方針としては、学習内容の定着を学校が確認できれば授業は不要なのです。つまり、どのような家庭学習を行ったかについては不問なわけです。

加えて、「学習内容の定着の評価」についても制約はありません。評価法は、教育委員会や学校の裁量に任せています。学校の先生は、今のうちに学習内容の定着をどう評価したらいいか学校として考えておいた方がよいでしょう。

このような文部科学省の方針は、家庭学習の学校格差の問題を解決しません。例えば、ある学校ではオンライン授業の参加やグループウェアの課題の提出等で定着を評価する一方、ある学校では大量の宿題プリントを配り学校再開後のテスト(もしくは家庭にテストを郵送)で定着を評価する、ということが起こり得るわけです。家庭学習の格差の問題は休校期間が長引けが長引くほど顕在化していく重要課題なのですが、今日はこの問題については踏み込みません。

授業時数についての文部科学省の考え

今日お話をしておきたいのは、文部科学省の授業時数についての考えです。学習指導要領には学校が行うべき授業時間が明確に記されています。しかし実は、授業時数というのは法令で明確に定義されていないのです。学校教育法施行規則を読んでいると「〜に定める授業時数を標準とする」と出てくるのですが、この「何が標準なのか」ということも明確になっていません。

今回のコロナによる休校措置で個人的に注目しているのが「文部科学省が今まであやふやにしてきた授業時数や『標準』の定義を明確に示すか」です。示し方としては、例えば「40分以上の双方向オンライン授業は授業時数としてカウントする」等です。

もう一つ、授業時数の定義と同じように注目しているのが「通信制の課程における教育課程の特例」の基準です。高等学校の学習指導要領総則編に記載されている項目ですね。これも実は明確になっていません。

もし文部科学省がこれらの基準を明確にしてきたら、コロナによる休校問題を長期(〜数年間)のスパンで考えていると言えます。これが出来たら日本の教育は一気に変わるでしょう!という期待を込めて最近の会見を聞いているのですが、4月10日の会見では、

記者)冒頭にお話しのあった通知の関係で改めて確認なんですけれども、ICT教育、遠隔教育を含めた家庭学習について、標準授業時数という小中については定めがありますけれども、それのカウントとしては基本的には扱わないという理解でいいのかという確認をまずしたいんですけど。

大臣)扱うの?

事務方)標準授業時数の中にカウントするものではありません。

大臣)カウントしないけれど、再度、再開後にその授業をやらなくてはならないということではないんだよね。

とありました。う〜ん。

つまり、今回限りの例外措置として休校中の家庭学習を扱う方針なわけです。文部科学省は今のところ「今年度」という中期の時間軸で考えていることが分かりますね。おそらく長期(〜数年間)のスパンでも考えてはいるでしょうが、そこは今はまだ表に出さない方針なのだと思います。