昨日、文部科学省が「学びの保障」オンラインフォーラムを開催しました。私もYouTubeで視聴したのですが、新しいポイントは特に示されませんでした。それよりも皆さんにお伝えしたいのが、その前日に行われた中央教育審議会の「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」の方です。この会議の中で、文部科学省が「ポストコロナ時代の遠隔・オンライン教育の在り方」について興味深い見解を述べています。ポストコロナ時代はハイブリッドになります。「学校再開されたらオンライン授業は不要だよね」と思っている人は、ぜひこちらをご覧ください。
文部科学省の会議資料
今回紹介したいのは、中央教育審議会初等中等教育分科会の「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会(第9回)」についてです。この会議の議題のひとつに「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた今後の学校教育の在り方等について」があります。この議題についてのポイントがまとまっているのが、次の資料2です。
資料2 新型コロナウイルス感染症を踏まえた、初等中等教育におけるこれからの遠隔・オンライン教育等の在り方について(検討用資料)
全部で7ページと短い文書ですので、お時間のある方はぜひ読んでみてください。
ポストコロナ時代の遠隔・オンライン教育
この文書で興味深いのが「(2)新型コロナウイルス感染症が収束した段階(「ポストコロナ」の段階)」です。まずは基本方針について見ていきましょう。
Society5.0 時代にこそ、教師が先端技術を活用し、児童生徒に対話的、協働的な学びを実現することが必要である。
今後は、対面指導の重要性、遠隔・オンライン教育等の実践で明らかになる成果や課題を踏まえ、発達段階に応じて、ICTを活用しつつ、教師が対面指導と家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育等とを使いこなす(ハイブリッド化)ことで協働的な学びを展開する。
その際、憲法や教育基本法に基づき、すべての児童生徒に対し、社会において自立的に生きる基礎や、国家や社会の形成者としての基本的な資質を養うことを目的とする義務教育と、義務教育の基礎の上に高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする高等学校における教育の違いにも留意する必要がある。
また、知・徳・体を一体的に育む「日本型学校教育」の良さを継承するとともに、履修主義と修得主義(※)等の考え方を柔軟に併用していくことで、多様な子供たちが誰一人取り残されることなく社会とつながる個別最適化された協働的・探究的な学びの観点から取組を進める。
(2)新型コロナウイルス感染症が収束した段階(「ポストコロナ」の段階) の基本方針より引用
この方針から分かるように文部科学省は、ポストコロナ時代において対面指導と遠隔・オンライン教育を併用するハイブリッド化の教育を検討していることが分かります。
そして具体的な取り組みイメージとして、次のような例を挙げています。
・児童生徒の習熟度に差が出やすい単元を指導する場面において、習熟度別の遠隔授業やオンデマンドの動画教材等の活用の時間や、教師や学習指導員が個別対応する時間を設けるなど、個別最適化された授業を展開。
「② 教師の対面指導と遠隔授業等を融合した授業づくりについて」より引用
・遠隔授業において、海外の児童生徒と交流することにより、多様な国や地域の文化に触れる機会を設ける。
「習熟度別の遠隔授業」とあるのが文部科学省らしいですね。N高のように「多種多様な専門性の授業」をオンラインで、とはいかないでしょうが、個別最適化は今よりも進むと期待できそうですね。今回の文書には書かれていませんが、教員の完全なリモートワークにも対応できるようになるかもしれませんね。
また高校では、次にあるように大きな改革が期待できそうです。
高等学校における同時双方向型の遠隔授業の実施について、単位数の算定、対面により行う授業の実施などの要件の見直しを行い、教師による対面指導と遠隔授業を融合させた 柔軟な授業方法を可能とし、多様かつ高度な学習機会の充実を図る。
「③ 高等学校における遠隔授業の活用について」より引用
そうです、これを期待しています。このブログでも度々書きましたが、オンライン教育を正しく学校教育の中で位置付けすることは大変重要です。
現在、授業時数について例外措置が取られており、単位認定の仕方が曖昧の状態です。これを、高等学校の学習指導要領総則編に記載されている「通信制の課程における教育課程の特例」の基準を明らかにした上で、オンライン授業の扱いを一般化することです。これらの内容が学習指導要領に反映することができたら、本当に凄いことです。
オンラインでの授業が授業時数にカウントされるようになったら、つまり対面授業のかわりとしてオンライン授業を選択できるようになったら、保護者の学校選びは大きく変わるでしょう。ポストコロナ時代の学校選びです。学校の先生は今のうちに、オンライン授業のハード・ソフトの両方をしっかり整備したほうが良いでしょう。
保護者の方も、進学予定の学校がどの程度の「オンライン授業力」を持っているのか情報収集が大事になります。例えば本間先生のホンマノオト21では、オンライン授業をはじめとして、様々な学校の素晴らしい取り組みがたくさん紹介されています。私も毎日チェックしているブログですので、ぜひ参考にしてみてください。
さてさて。文部科学省の中央教育審議会のスケジュールをみてみますと、9月28日に「中間まとめ(案)」が出される予定です。これから議論がどのように進んでいくのが、注目していきたいと思います。
One comment
Pingback: 6月のアクセスランキング | 福原将之の科学カフェ