Home » 教育者向けの記事 » 時間がない先生のための「学校の情報環境整備に関する説明会」の見所紹介とポイント解説(一部文字起こし付き)

時間がない先生のための「学校の情報環境整備に関する説明会」の見所紹介とポイント解説(一部文字起こし付き)

昨日5月11日、文部科学省が「情報環境整備に関する説明会」についてYoutubeでLIVE配信を行いました。再生回数が既に3万2千回を越えており、多くの教育関係者の注目を集めています。私も今朝方に視聴したのですが、確かに一見の価値はあります。しかし動画は2時間24分にも及ぶため、忙しい先生が全部を視聴するのは大変です。そこで今回の会見のポイントと見所を整理してまとめてみました。見所の重要箇所は文字起こしもしてあるので、良かったらご覧ください。


【スポンサードリンク】

今回のポイント解説

会見の詳細は後述する4つの見所を見ていただくとして、ここでは簡単に会見のポイントを解説したいと思います。まず前提として、この会見は「ICT補助金(GIGAスクール構想)の説明会」だということです。(ですが、今回注目を集めているのは、補助金の詳細説明ではない箇所になっています。)

同じ文部科学省の会見でも、今回の説明会は文部科学大臣クラスの会見ではなく、メインの話者の肩書きは初等中等教育局の情報教育・外国語教育課長なのです。ただし冒頭に、初等中等教育局担当の審議官の方が少しだけ話されています。文部科学省の役職についてはこのページから確認できます。役職は影響力に直結しますので、誰が何を発言したのかは注目しておく必要があるでしょう。

それを踏まえて、今回の会見のポイントは次の3つだと考えています。

  1. 文部科学省は、コロナ感染症対策が長期化(数ヶ月単位、数年単位)すると考えている【審議官と課長】〜見所①, 見所③
  2. 文部科学省でも、工業化社会の考え方から脱工業化社会の考え方に変わってきている【審議官と課長】〜見所, 見所③
  3. 文部科学省が「ICTを導入しようとしない自治体(教育委員会や学校)」に対してプレッシャーをかけた【課長のみ】〜見所

見所④の髙谷浩樹課長の熱のこもったプレゼンがSNSでは話題になり「文部科学省が本気になった!」と騒がれていますが、それよりも注目すべきは「コロナ感染症対策の期間」と「文部科学省の考え方」だと思っています。

最近になって学校再開の動きが見えたり、9月入学が話題となっていますが、文部科学省では「かなり長期戦になる by 矢野審議官」と考えていました。各学校も長期戦を覚悟してオンライン教育を整備した方が良いでしょう。

そして文部科学省の考え方について。私は4月24日のブログで「文部科学省の変化の兆」という記事を書いたのですが、この変化が文部科学省内で着実に進んでいることが分かりました。工業化社会の考え方「一律に出来ないなら諦めよう」という発想から、「使えるものは何でも使いましょう。できることからできる人から使いましょう。一律にやる必要はありません」という脱工業化社会の考え方にシフトしています。文部科学省は変わると思います。

一方で、「ICTを導入しようとしない自治体(教育委員会や学校)」に対してプレッシャーをかけた」件については、私はあまり評価をしていません。発言者の役職が課長だったこともそうですが、そもそも一部の教育委員会や学校長を敵に回すような発言をすることは文部科学省の役目ではないと思っています。

それでは、文部科学省の役目はいったい何でしょうか。それはオンライン教育を正しく学校教育の中で位置付けすることです。現在、授業時数について例外措置が取られており、単位認定の仕方が曖昧の状態です。これを、高等学校の学習指導要領総則編に記載されている「通信制の課程における教育課程の特例」の基準を明らかにした上で、オンライン授業の扱いを一般化することです。これを行えば、ICTを活用しない教育委員会や学校長を敵に回さずに、ICT対応を促すことが可能になるでしょう。

とはいえ、今回の会見で審議官クラスの方が「脱工業化社会の考え方」を発信されていたので、期待はあります。今後の文部科学省の動向に注目していきたいと思います。

以下、今回の会見の見所を4つ紹介します。お時間のある方は是非ご覧ください。

5/13 追記:当日の説明会の資料は、こちらのページの一番下からダウンロードできます。

【冒頭の見所①】2分28秒〜

まずは冒頭の矢野和彦審議官(初等中等教育局担当)のパートです。こちらをSNSで取り上げている人は多くありませんが、とても大事なポイントです。

見所① 2分28秒〜3分00秒

5月1日の文科省の通知でお示しいたしておりますけれども、このコロナ感染症対策はおそらくかなり長期戦になる。これとどうしっかりと向き合っていくか、付き合っていくか、ていうことが非常に重要になる、ということから考えてもですね、このICT環境整備、ICTを使って双方向で子供たちの学びを保障していく。これは最も重要なツールのうちの一つであることには全く変わりません。

【冒頭の見所②】4分12秒〜

こちらも矢野和彦審議官(初等中等教育局担当)のパートです。

見所② 4分12秒〜5分45秒

先日ある市の教育長さんからこういう話を聞きました。5%の家庭にインターネットが繋がってない。従来の学校や教育委員会の考え方であれば、5%の子供が無理なんだから、インターネットに繋がらないんだから、諦めようという発想だった。

しかし、95%の子供たちはやっている。残りの5%る子供たちについては、どういう手当てができるか、全力で考えようと、いうような発想に変わった。変えていった。

この子供のですね、学びをどう保障するかということを真面目に考えればそういう発想になるはずです。

ぜひ、ご家庭の事情により端末や回線が整備されていないご家庭に対しては、文科省の補助金を活用した整備を行っていただいて、ルーターを、今回だいたい20%弱のですね、お子さんに貸し出せるような補助金も立てております。
またすでに改善整備がなされているような学校社会教育施設もですね、活用する。そこに子供に集まってもらって、そこで同時双方向の学習を行っていく、そういった多分いろんな知恵が出てくると思います。

各地域に、いや、学校においてですね、あらゆる創意工夫をやって5%の子供が出来ないから出来ないではなくて、5%の子供たちをどうしたらできるようになるか、そういった発想を持って取り組んでいただければと思います。

【中盤の見所③】21分48秒〜

髙谷浩樹課長(初等中等教育局の情報教育・外国語教育課長)のパートです。

見所③ 21分48秒〜28分46秒

こちらは長いので、重要箇所だけ文字起こしして引用します。

日本全体でこれだけいつ何が起こるかわからない、まさにあれに匹敵するような、そして西日本の方にとってはむしろ前代未聞なのかもしれません。非常時緊急時。

なのに危機感がない方、危機感のない自治体が多いです。もちろんその自治体で、コロナに実際にかかっておられる方が少ない。そして緊急の措置というものが、解除に向かうんじゃないかというような雰囲気が出てるところもあると思います。

ですが、先ほどもございました通り、これは長丁場になります。必ず長丁場になります。第2波、第3波というものが来る可能性大いにあります。そして3密を避けなければいけないというのは、数日単位じゃなくて、数ヶ月単位、数年単位というような話さえできています。そのような中で、ICTはオンライン学習というものは、学びの保障に当然ながら大いに役立つものです。

(中略)

今何をすべきか。使えるものは何でも使いましょう。家庭のパソコン、それから子供本人のパソコンでなくても家族のスマートフォンを使う先ほどご紹介をしました携帯各社さん25歳以下の利用者に対して優遇措置まで取っていただいています。あるものを使いましょう。それを、できることからできる人から使いましょう。さっきの審議官のお話の中でも、5%の子供ができないからということを話しエピソード紹介ございました。一律にやる必要はありません。緊急時ですからそれなのにや一律じゃないから駄目なんだというのは、やろうという取り組みから残念ながら逃げているというふうにしか見えなくなります。それは大きな間違いです。できる人からできることから取り組まなければいけない緊急時です。この後ご説明する環境整備もその通りです。ぜひできることから進めてください。

(以下、略)

見所③の全文の文字起こしは、こちらのサイトから読むことができます。

【終盤の見所④】1時間51分30秒〜

先ほどと同じく、髙谷浩樹課長のパートです。内容としては見所③の繰り返しですが、プレゼンに熱がこもっています。「ICTを導入しない自治体」の説明責任について言及しています。

見所④ 1時間51分30秒〜1時間54分22秒

学校のICT環境を進めようとされてる自治体さんが、なんで学校にパソコンがいるんだと。何でそこに予算を入れなきゃいけないんだ。せっかく取り組もうとされている自治体さん、学校の先生、管理職に対して説明責任が生じて、それを乗り越えようと頑張っておられました。

世の中が、ところが変わりました。GIGAスクール構造、それから新型コロナウイルスへの感染症対策で、世の中変わりました。

ICTを使おうとしない自治体さんにこれからは説明責任が生じてきます。皆様それをぜひ、文部科学省ではありません、全国の地元の自治体のお子さん方に、なぜ使わないのかという説明責任が生じるんだということをですね、ぜひご理解をいただいて、進めていただくという必要があります。私どももですね、この説明責任が求められています。

皆様方に、その説明責任を負っていただくと、いうことになる状況に、今、私どももお尻に火がついてます。今ですね、ここでICTを取り組まないのはなぜかということについてぜひご理解をいただいてご対応いただきたい。ご対応いただきたいじゃないですね。私達ですね、今、今日この日に学校のICT環境整備の担当になったんだから、やんなきゃいかんです。

これ何年かかってあんとき担当だったのは誰なんだってこう言われるとですね。その人間にですね説明責任がでてきます。文科省でいえば私なんですね。私もなんでお前あれやんやんなかったんだ、できなかったんだ。皆さんと一緒です。一蓮托生です。もう文科省も一蓮托生なんすけども、教育業界がみんな一緒になってですね。ICT環境なんでこんなコロナのときにやらなかったの。はっきり言って今の一般社会から見たら、教育のICT環境ってものすごい遅れています。私も教育担当して驚いてます。皆さんもぜひおかしいんだ、今が間違ってんだということをぜひご理解いただいて、ぜひ対応してください。で、やろうとしても進まないんだったら、進められないんだったらさっきの窓口にぜひ相談してください。

やろうとしないということが一番子供に対して罪だと私は思います。ぜひご対応いただければと思います。