学習指導要領による制限と教員の裁量(1)

「Society5.0は脱工業化社会」を書いている途中ですが、ここで少し学習指導要領について触れておきたいと思います。学校で学ぶ内容は学習指導要領によって規格化されていると論じてきました。そこで今回は、学習指導要領がどのように制限を課しているのか、学校と教員にはどんな裁量が認められているのか、見ていきたいと思います。


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学習指導要領のポイント

文部科学省の資料を読むと、こうあります。

学習指導要領等は、全国的に一定の教育水準を確保するとともに、実質的な教育の機会均等を保障するため、国が学校教育法に基づき定めている大綱的基準。各学校段階ごとに、それぞれの教科等の目標や最低限教えるべき教育内容を定めている。 時代の変化や社会や子供の実態等に対応し、これまで概ね10年に一度改訂が行われてきた。

学習指導要領のポイントは、「最低限教えるべき教育内容を定めている」という点です。学習指導要領に記載されている制限事項や禁止事項は、当然守らなければいけません。しかし、学習指導要領に反していないことであれば、実は学校と教員に裁量が認められているのです。

制限事項・禁止事項

最初に、学習指導要領によって制限されていること、禁止されていることを見ていきたいと思います。個別最適化の教育を行う上でネックになるのは、学習内容と学習時間の制限です。先ほど述べたように、学習指導要領には「最低限教えるべき教育内容」が定めています。大原則として、定められている内容については必ず授業で扱わなければなりません。これが学習内容の制限です。

一方、学習時間の制限はと言うと、学習指導要領では次のような記載があります。

平成30年告示の高等学校学習指導要領

週1コマ(50分)の授業を年間35週受けると1単位になります。例えば、数Ⅰは3単位の必修科目ですので、全ての高校一年生は週3コマの時間割が数Ⅰに割り当てられています。このようにして他の科目についても、自動的に時間割が割り当てられることになります。月曜から金曜までビッシリ埋まるでしょう。これが学習時間の制限です。(実際は必修科目と選択科目で少し自由度がありますが、ここでは割愛します。)

禁止事項については、代表的なものとして政治と宗教が挙げられます。「特定の政党を指示し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動」や、国公立学校における「特定の宗教教育その他宗教的活動」が禁止されています。(教育基本法第14条第2項、第15条第2項)

学習指導要領は文部科学省のホームページから無料でダウンロードできます。私は冊子の方が便利だと思ったので、上記リンクの製本された学習指導要領を使っています。600ページもあるので分厚いです。教員の方は、お手元に一冊あると便利だと思います。

さて、今回は学習指導要領の制限について見てきました。制限が厳しいと感じられたかもしれません。しかし、学校と教員に与えられた裁量を理解すれば、現行の学習指導要領でも個別最適化の教育を実施する余地は見つけられます。次回は、学校と教員の裁量について見ていきたいと思います。(続く)