今日から数回にわたってプログラミング教育の論考を書いていきたいと思います。プログラミング教育についての”Know How(どのようプログラミング教育をするか)”は、既に多くの書籍やwebサイトで語られてきています。そこでこの論考では、”Know Why(なぜプログラミング教育をするか)”の観点から考察をしていきたいと思います。
多くの方がご存知の通り、今年の4月から小学校でプログラミング教育が必修化されます。子供たちの幸せのために、なぜプログラミング教育が必要なのでしょか。”Know Why”を理解しておくことは、先生にとっても保護者にとっても大切だと思います。
プログラミング教育必修化の流れ
プログラミング教育の”Know Why”を知るために、まずはプログラミング必修化の流れを確認しておきましょう。
- 2016年4月 産業競争力会議で「小学校におけるプログラミング教育必修化」を発表
- 2016年4月〜6月 プログラミング教育に関する有識者会議
- 2016年6月 小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)
- 2017年3月 プログラミング教育が含まれた学習指導要領の告示
- 2020年4月 小学校でプログラミング教育の必修化がスタート
- 2021年4月 中学で技術・家庭科のプログラミングの内容が倍増
- 2022年4月 高校で情報Ⅰが新設され、プログラミングが必修化
さて、”Know Why”を知るために着目すべきは、一番最初のきっかけです。上の年表によると、2016年4月に産業競争力会議にて安倍首相がプログラミング教育必修化を発表とあります。鍵となるのは2016年。この年に起こった出来事を調べてみると、実は2つの大きな出来事が浮かび上がってきます。
世界経済フォーラムとIT人材の将来推計
2つの大きな出来事、それは世界経済フォーラムのダボス会議とIT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果です。
ダボス会議の議題のひとつに取り上げられたのが、第4次産業革命です。第4次産業革命とは、Society4.0(情報社会)からSociety5.0(超スマート社会)に移行する際の産業革命で、今まさに現在進行形で起こっています。第4次産業革命のキーワードはIoT(Internet of Things, モノのインターネット)やAI、ビッグデータ、ロボット、クラウドなどが挙げられます。ダボス会議では、この第4次産業革命の可能性やそれが社会にもたらす影響について議論されました。
第4次産業革命のキーワード(IoT, AI, ビッグデータ, etc…)は、いずれも市場の拡大・成長が大いに見込まれる分野です。しかしそのためには、市場を牽引するIT人材(エンジニア)が必要不可欠です。さて、日本のIT人材は将来的に足りるのでしょうか?それを調査したのが、2つ目の大きな出来事「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」なのです。
この調査によると、2015年時点で約17万人のIT人材が不足しており、2030年には約59万人程度まで人材の不足規模が拡大すると予測しています。せっかく第4次産業革命で経済成長をするチャンスがあるのに、肝心のIT人材が不足してしまっているのです。
もうお分かりですね。プログラミング教育が必修化された背景には、第4次産業革命とIT人材不足があったのです。プログラミング教育の”Know Why”を知るためには、「第4次産業革命」と「新しい時代のIT人材」について理解しておく必要があるのです。(続く)
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