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学習指導要領による制限と教員の裁量(4)

(承前)ここまで「学習指導要領による制限と裁量」についてブログで紹介してきました。実は、学習指導要領の制限の一つである「学習時間の制限」に関して、一部の学校では例外とも言える規則が存在するのです。今回は「通信制高校における特例」について見ていきたいと思います。


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通信制高校の特例

高校の学習指導要領の総則を読むと、興味深い記述がみつかります。「通信制の課程における教育過程の特例」です。

高校の学習指導要領総則より引用

通信制の学校に通っている子供たちは、様々な理由から「スクーリング(物理的に学校に通うこと)」が困難な子供たちが多いです。そのため、その事情に配慮した特別な制度「通信制の課程における教育過程の特例」が通信制の学校には適用されます。

特例を実際に読んでみると、通常の高校に比べて「学習時間の制限」が緩和されていることが分かります。どの程度緩和されているのでしょうか。数Ⅰを例にして考えてみましょう。

高校の学習指導要領を読むと、数Ⅰの学習時間は「3単位」とあります。これはつまり、週3コマ(50分×3)を年間で35週受けなければならないことを意味します。トータルの時間を計算すると、50分×3コマ×35週=5250分(87時間30分)の授業が義務付けられています。

一方、通信制の学校における数Ⅰは、添削時間が「3回」に面接指導(=授業)が「1単位時間」とあります。単位時間とは50分(1コマ)です。そうなんです。驚いたことに、通信制学校では年間で50分の授業を1回受ければオッケーなのです。通常の高校では年間5250分の授業時間が義務付けられているのに対し、通信制学校では年間50分の授業時間しか義務付けられていないのです。これが通信制学校の特例です。

「通信制高校はずるいな」と思われるかもしれません。慌てて補足しますと、この特例は「スクーリングが困難な子供たち」のために考えられた制度だということです。もし通信制で通常の高校と同じような授業時間を課したら、多くの子供たちは卒業することが難しくなるでしょう。通信制という特殊な教育を成り立たせるために、この特例はやはり必要なのです。

通信制学校の変化

しかし、2016年になって通信制学校の業界が大きく変わり始めます。驚いたことに、この通信制の特例を使って「個別最適化の教育」を行おうとする学校が現れたのです。通信制学校であれば、学習指導要領による「学習時間の制限」から逃れることができます。そうして出来た時間を使って、子供たち一人ひとりにあった「個別最適化の教育」を展開しようというわけです。

特筆すべきは、この新しいタイプの通信制学校は、従来の「スクーリングが困難な子供たち」以外の子供たちもターゲットにしている点です。従来の通信制学校のイメージが大きく変わり始めています。

通信制特例を使った方法の良し悪しは置いておいても、今後は ”敢えて” 通信制学校を選択するような保護者・子供が増えていくと予想してます。このような新しい通信制学校の登場は、今後の教育業界の動きを考える上で無視できない存在です。このことについては、「Society5.0は脱工業化社会」の続きで論じていきたいと思います。