Home » 教育者向けの記事 » 学習指導要領による制限と教員の裁量(2)

学習指導要領による制限と教員の裁量(2)

(承前)前回は学習指導要領の制限について見てきました。制限が厳しいと感じられたかもしれません。しかし、学校と教員に与えられた裁量を理解すれば、現行の学習指導要領でも個別最適化の教育を実施する余地は見つけられます。今回は、教員の裁量について見ていきたいと思います。


【スポンサードリンク】

教員の裁量

前回みてきたように、学習指導要領によって「最低限教えるべき教育内容」と学習時間の制限が課せられています。学習指導要領に書かれている「最低限教えるべき教育内容」は、全ての生徒たちに指導しなくてはなりません。加えて、各教科で実施しなければいけない最低限の授業数も決められています。一体どこに教員の裁量があるのでしょうか?

学習指導要領を実際に読んでみると、非常に簡潔に書かれていることがわかります。学習指導要領の記述に反することしてはいけません。しかし実は、その記述に反してさえいなければ、学習指導要領に書かれていない内容を教えても大丈夫なのです。これが、学習内容に関する「教員の裁量」になります。

学習時間に関する「教員の裁量」もあります。数Ⅰや英語コミュニケーションⅠなどの教科の年間授業時間は決められています。しかし、その教科の授業において、どの単元にどれだけ時間を使うかは「教員の裁量」になります。ある内容を授業で1時間取り扱うか、1分間だけ使うか、3時間みっちり使うかは教員の自由なのです。さらには、単元や内容を取り扱う順番についても「教員の裁量」が認められています。例えば、世界史の授業において取り扱う順番を、一般的な時系列順ではなく地域順にすことも「教員の裁量」でできるのです。

「え、本当にそうなの?」と思われる方のために、文部科学省で学習指導要領改訂を担当した方の書籍から引用しておきたいと思います。

学校や教師は、学習指導要領が示したもの以外の内容を加えて指導したり、単元のまとまりを見通して特定の内容に思い切って重点を置いて指導したり、指導の順序を組み換えたりするなど児童・生徒の実態に即した創意工夫が可能であり、効果的な教育活動にとってこの創意工夫が重要であることはもちろんです。

「学習指導要領の読み方・活かし方」32ページより引用

「裁量が無い」と感じる理由

トータルの授業時間最低限取り扱わなければいけない内容(+取り扱ってはいけない内容)が学習指導要領によって定められており、それ以外では「教員の裁量」がある程度認められていることが分かりました。しかし、多くの教員の方々の実感としては、「裁量がある」とは感じていないと思います。それは何故でしょうか?

それは、多くの教員の方々が教科書や教師用指導書に従って授業を行っているからです。教科書や教師用指導書に書かれている内容を、書かれている順番で、書かれている指導計画に従って授業を行っているからです。これは、裁量権の放棄にほかなりません。

慌てて補足しますと、教員には教科書の使用義務があります。しかし教科書の使用義務は「教科書を主たる教材として使用すること」を求めたもので、決して「教科書に書かれている内容をすべて教えなければならない」ということではありません。教員は学習指導要領に従わなければいけませんが、教科書や教師用指導書に従う義務はないのです。

教育の個別最適化を進めるのであれば、教員は自らの裁量権を放棄すべきではありません。裁量権を放棄しなければ、工業化社会の学校においても個別最適化した学習は可能です。あなたが教員で、もし学習指導要領を読んだことがないのであれば、この機会に目を通してみてはいかがでしょうか。