今日はAIと教育現場についての話題です。AIには文章生成や音楽生成を得意とする「ジェネレーティブAI」と呼ばれるものがあります。いわゆる「0から1を生み出すAI」です。ジェネレーティブAIは大変優れている一方、教育現場では悪用が懸念されています。例えば、作文やレポートをAIに代筆させることができるわけです。日本ではまだ大きな問題にはなっていませんが、遅かれ早かれ教育者はジェネレーティブAIとの付き合い方を考えていく必要があるでしょう。
最新のジェネレーティブAI「ChatGPT」
ジェネレーティブAIで最近話題になっているのが、米人工知能研究機関OpenAIが発表した「ChatGPT」です。
ChatGPTは2022年11月末にリリースされたばかりのサービスで、AIとチャットで対話をすることが可能です。百聞は一見にしかず、ChatGPTにお願いして「夏目漱石の読書感想文」を書いてもらいましょう。
残念ながらChatGPTには文字数制限があるため原稿用紙1枚分が限界でしたが、本当に優れたAIでいろいろなことが可能です。
たとえば「最小二乗法についてレポートを書いて」とお願いすると以下の通り。
プログラミングの問題もお手のものです。
すごいですね。AIに質問すれば、Googleで検索するよりも簡単に色々なことを知ることができそうです。もちろんAIなので見当違いな返答が返ってくることもありましたが、それを考慮しても素晴らしいサービスです。現在はサービス開始時のため無料で利用できますが、有料でも使ってみたいと思う凄みがあります。
そんな凄いジェネレーティブAI「ChatGPT」ですが、教育現場では「課題の代筆」という大きな課題を生み出します。実際、今年1月にニューヨーク市教育局は管轄する学校組織のオンライン端末およびインターネットネットワークにおける「ChatGPT」へのアクセスを禁止しました。(教育局は日本の教育委員会のようなものです。)
ニューヨーク市教育局は米国時間1月3日、教育ニュースサイトChalkbeatに対し、「学生の学習に対する悪影響と、コンテンツの安全性や正確性に関する懸念」を理由に、同サービスの利用を制限することを明らかにした。
「疑問に対する回答を迅速かつ簡単に得ることができるかもしれないが、学問や人生で成功を収めるために不可欠となる、クリティカルシンキングや問題解決のスキル育成にはつながらない」と、同局広報のJenna Lyle氏は語った。
学生や教員は、学校組織と関係のない端末からChatGPTに接続することは、これまでどおり可能だ。また、この次世代チャットボットの背景技術を学ぼうと考えている学校はアクセスを要請できると、同氏は付け加えた。
ChatGPTを禁止したのはニューヨーク市が初めてだが、同市の教育局は米国最大の学校組織であり、これをきっかけに他の地域でも同様の動きが広がる可能性がある。
現時点では、「ChatGPT」を禁止するというニューヨーク市教育局の判断は最善だと思います。しかし、テクノロジーと社会は進化します。ジェネレーティブAIは近い将来、確実に私たちの生活へ入ってきます。書籍やweb記事をジェネレーティブAIで作るのが当たり前になる時代がやってきたとき、果たして教育現場は「ジェネレーティブAIは禁止」という判断で良いのでしょうか。おそらく、そうはならないでしょう。
GIGAスクール構想でICT端末を学校教育に取り入れたように、ジェネレーティブAIを上手に活用して学習をデザインしなおす必要が出てくるでしょう。その時になって慌ててしまわぬよう、今からジェネレーティブAIとの付き合い方を考えてみてはいかがでしょうか。
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