今日紹介するのはマーケティング・インタビューについての書籍です。マーケティング・インタビューとは、企業が市場の現場を知るために一般消費者であるユーザーに対して行う聞き取り調査のことです。この本では、ユーザーとの対話から問題解決のヒントを聞き出す技術やコツが丁寧に紹介されています。
コーチングの価値観を引き出す聞き方や、カウンセリングの傾聴する聞き方とはまったく違う、マーケティングインタビュー独特の「問題解決のヒント」を聞き出す技術はとても参考になりました。お仕事でインタビューをする機会がある人におすすめの一冊です。
書籍紹介
目次は以下の通りです。
- はじめに
- 第1章 マーケティング・インタビューでわかること
- 第2章 言語以外の情報を読み取る
- 第3章 インタビュアーが守るべき3つの原則
- 第4章 インタビュー対象を選ぶ
- 第5章 「聞き出す」ための視点と枠組み
- 第6章 安心して話してもらうために
- 第7章 語りにくいイメージを探る技法
- おわりに
この本では、10年間で1万人以上にのぼるインタビューを実践してきた著者が、事例を紹介しながら「聞き出すコツ」について分かりやすく解説しています。著者の上野啓子さんは次のように言います。
漠然と質問をぶつけているだけでは答えてくれない。インタビューの進め方、質問の投げかけ方、回答の受け止め方、そして人の意識を掘り下げる手法などを学び実践することで、聞きたかったことが「引き出せる」ようになる。
時には、インタビュアーはもちろんのこと、インタビュー対象者自身もそれまで気づいていなかったことを「聞き出す」ことができるようになる。
私がこの本で特に「なるほど!」と思ったのは、第2章2節有益な情報が含まれている「沈黙」〜沈黙を尊重する、です。
インタビュー中に相手が沈黙してしまうと、私たちはつい「質問がまずかったのかな?」「回答を急かした方が良いかな?」などと考えてしまいます。そして気まずさを感じては「沈黙はできれば無い方がよいな」と思うわけです。
しかしながら著者は次のように断言します。「沈黙は有効な情報である」と。
フォーカス・グループ・インタビューが司会者と対象者あるいは対象者同士のキャッチボールであったとすると、沈黙は透明のボールであると思えばいいかもしれない。沈黙は決してキャッチボールへの参加拒否は中止ではない。ある人が発言する。それは1人が色付きのボール、目に見えるボールを投げたようなものだ。そのボールをもらっても、ある人が透明ボールを投げる、つまり沈黙する場合もある。
そして著者は、沈黙を「呆然の沈黙」「不明の沈黙」「一時停止の沈黙」「嫌悪の沈黙」「躊躇の沈黙」「遠慮の沈黙」「自明の沈黙」の7種類にタイプ分けして考える方法を教えてくれます。正直、眼から鱗でした。
こうした知識や技術を勉強しておくことは、インタビューの時だけでなくコーチングやカウンセリング、日常会話でも役立つと感じました。コミュニケーション能力を伸ばしたい人にもおすすめの一冊です。