先週末に一泊二日の旅行に出かけたのですが、実はハイキング以外にもお目当てのものがありました。それは、2020年9月1日にオープンしたばかりの那須塩原市立図書館「みるる」です。
市立図書館「みるる」は、栃木県北部にあるJR黒磯駅に誕生した新しいタイプの駅前図書館です。パブリックスペース(公共空間)として、図書館としての見た目だけでなく、長期的な視点から地域の活性化や住民の生活の幅を拡げるための工夫が施されています。今日はこれからの時代の新しい図書館について考えてみたいと思います。
那須塩原市立図書館「みるる」
こちらが旅行中に視察した那須塩原市立図書館「みるる」です。JR黒磯駅の駅前にあるため、駅の行き帰りなどに住民が立ち寄りやすい立地になっています。
図書館としての機能は2階フロアに集中させており、1階フロアは住民の日常の通り道にもなるコミュニティ・スペースとなっています。とても素晴らしい空間でした。
「みるる」の空間デザインとコンセプトがとても素晴らしかったので、建築家についても調べてみたところ、驚いたことに「地元那須出身の若手建築家」が公募型プロポーザル方式で選定されたそうです。建築家のインタビュー記事がとても興味深かったです。
「これまでの図書館は本が所蔵され、勉強や調べものをするところでした。しかし、今はインターネットで本を買えるし、いろいろなことを調べられます。図書館の機能も変わらなければなりません。那須塩原市では、人が集い、多世代が交流し、市民が自分たちの街を知って能動的にアクションを起こしていく”学びの場”としての『図書館』を目指しています」
(中略)
「ワークショップなどを開催し、市民の声を聞きながら必要な機能を考えていきました。また、私自身が育った街なので、人の動線が自然とわかり、若者の行き場所の無さなど、何に困っているのかもわかりました。那須塩原市の『図書館』は、静かにしなければならない従来の図書館とは異なり、『少々うるさい図書館』になります。行政の要求に従って建物を設計するのではなく、市民に立脚することで、街への広がりも生まれます」
「『図書館』から街の未来を描く 建築が変える「公共」のカタチ」より引用
まさに「これからの時代の地域の図書館」ですね。私も「みるる」のような素敵な図書館がある街で暮らしてみたいと思いました。
地域の図書館でオンライン学習をする時代
那須塩原市立図書館「みるる」を視察して思ったのが、こうした地元密着型の「学びの空間(居場所)」があると、保護者や子供たちが「広域通信制学校」を選びやすくなるだろうということです。
私は、公立学校においても広域通信制学校は必要だと考えています。公立の広域通信制学校があれば教育機会格差の是正にもつながりますし、何より多様な選択肢を保護者と子供に与えることができます。
ちなみに来年度からは、中山間地域や離島の小規模公立高校で遠隔授業が試験的に運用されます。個人的には5年後ぐらいに、広域通信制の公立学校が登場しないかと期待しています。
広域通信制の公立学校が出てくるころに課題となるのが、生徒たちが学ぶ居場所の問題です。自宅に十分なネット環境がないご家庭もあるので、そうしたときに活躍するのが公民館や「みるる」のような新しいタイプの図書館だと思います。
さらに妄想すると、社会人になってからのリカレント教育をオンラインやVRで学ぶことができる施設も、地域にあると素敵ですよね。
新しい時代の地域の図書館が、これから増えていくことを期待しています。