新内閣発足が発足し、文部科学省でも様々な動きが起こっています。10月2日に萩生田文部科学相と平井デジタル改革相、河野行政改革相の三者会談が行われ、縦割り行政からの脱却が期待される動きがありました。小学校・中学校に続いて高校でも1人1台ICT端末を整備する方針が示されたり、デジタル教科書の本格導入に向けて議論が行われたりしています。
一方で、教育分野のデジタル化については、萩生田文部科学相は「すべての授業がオンラインで代替できる、授業日数にカウントする、というのは今の段階では考えていない」と発言し、授業のオンライン化に慎重な考えを示しました。文部科学省の消極的な姿勢にがっかりした人もいるかもしれません。
しかし大臣の会見を丁寧に聞いてみると、オンライン授業の可能性が示唆されていることが分かります。今日は文部科学省の示唆するオンライン授業の可能性について考えてみたいと思います。
萩生田文部科学相の会見
まずは萩生田文部科学相の会見での発言をみていきましょう。
記者会見の内容は、こちらの文部科学省のホームページからチェックすることができます。10月6日と10月9日の会見がポイントです。大事な箇所をニュース記事等から引用して見ていきましょう。
萩生田光一文部科学相は6日の閣議後記者会見で、教育分野のデジタル化について、「すべての授業がオンラインで代替できる、授業日数にカウントする、というのは今の段階では考えていない」と述べ、義務教育段階での授業のオンライン化に慎重な考えを示した。
今月2日に河野太郎行政改革担当相、平井卓也デジタル改革担当相と意見交換した際にも、「義務教育は対面、集団でさまざまな活動をするわけであり、授業を映像で見たか見ないかというだけでは学校の意味は出せない」との認識を伝えたことを明らかにした。萩生田氏によると、河野氏と平井氏はこの考えに理解を示したという。
文科相、義務教育オンライン化に慎重 授業日数へのカウント「考えていない」 より引用
萩生田氏は2日に平井氏と河野氏と会談。平井氏からは小中学校の教科書の原則デジタル化、河野氏からはオンライン授業に教員が立ち会う決まりの緩和などを求められたという。
萩生田氏は「何か取り決めたことはない」とした上で、教員の立ち会いについて「子どもに適切に指導するには受信側に教師がいることが必要。教師が同席しないオンライン指導をもって対面授業に代替できることは現段階で考えていない」と述べた。その上で「学校に来なくてもいい世の中をつくってはいけない」との考えを示した。
文科相「オンライン授業だけでは乱暴」河野氏らにクギ より引用
「義務教育段階」と「受信側に教師がいること」
会見で文部科学大臣は「すべての授業がオンラインで代替できる、授業日数にカウントする、というのは今の段階では考えていない」と述べましたが、これは「義務教育段階」だというのがポイントです。
私は記者会見の動画をみて、「高校」ではオンライン授業が授業日数にカウントされるかもしれない、とポジティブな期待を持ちました。高校では「広域通信制学校の特例」が既に存在しますし、文部科学省の中でも前向きに検討されている可能性は十分あると思います。
一方、小学校と中学校の義務教育過程においては、「すべての授業」がオンラインで代替できるようにはしないという意向を示しています。「学校に来なくてもいい世の中をつくってはいけない」というのがコアメッセージですね。ただし、義務教育段階でもオンライン授業の可能性はあります。
文部科学大臣は「子供一人一人に対して適切に指導を行うためには、受信側に教師がいることが必要」と述べました。言い換えると、「先生がいる教室」に生徒が集まって行うオンライン授業は可能だということです。
これはつまり、専門性の強い教科、例えばプログラミングや英語の授業などでは、学校外部の専門家にお願いして「教室にいる生徒たち」にオンライン授業を行うことは可能だということです。
そしてオンライン授業ですので、全員が同じ先生から教わる必要性もありません。学校の工夫次第では個別最適化のオンライン授業も行えるのではないでしょうか。
学校教育のデジタル化・個別最適化が進んでいくことを期待しています。