今日紹介する本は、イベントの主催者やコミュニティ運営者、それに交流会のファシリテーターの役割で悩んでいる人にお勧めの本です。Amazonの評価では星3.8なのが不思議なぐらい、私にとっては示唆にあふれた最高の一冊でした。(ちなみに、海外Amazonでは星4.6の評価です。)
本のタイトルは「最高の集い方: 記憶に残る体験をデザインする」なんですが、個人的には原書のタイトル「The Art of Gathering: How We Meet and Why It Matters」の方がしっくりきました。イベントやコミュニティ、交流会などにおいて「体験の質を高めるための考え方」が、著者の経験した事例とともに紹介されています。「参加者の記憶の残るイベントにしたい」「参加者の横の繋がりを作りたい」などの悩みを抱えている人にお勧めの一冊です。
書籍紹介
目次は以下の通りです。
- なぜ集まるのかを深く考えよう
- あえて門戸を閉ざす
- 裏方に徹しない
- 別世界をつくり出す
- イベントは準備が九割
- 自慢や宣伝を排除する
- 白熱する議論
- 最高のクロージング
著者はMITで組織デザインを学んだ、経験豊富なプロフェッショナルファシリテーターです。15年以上にわたり、人権問題や紛争解決などの複雑な対話のファシリテーションを行っています。著者がホストを勤めた世界経済フォーラムの夕食会で新しい交流手法「15の乾杯」を創り出したエピソードは、とても興味深かったです。
個人的にとても参考になったのは、第3章「裏方に徹しない」です。ここでは、忘れてはいけない「ホストの役割」が丁寧に記されています。
ホストは何よりもまず、ゲストを守らなければならない。それがいちばん大切な力の使い道だ。ゲストを他のゲストから守り、退屈から守り、ポケットの中でブルブルと震えているスマホの誘惑から守るのは、ホストの役割だ。誰でもノーと言うのはいやなものだ。でも、自分が誰かを守り、何を守っているのかを理解すれば、ノーと言うのが楽になる。
もう一つ、主催者の力を使ってできる大切なことがある。それは、一時的にゲストの序列をなくすということだ。どんな集まりにも、必ず何らかの序列があり、想像であれ現実であれ、ステータスの違いが存在する。たとえば全社集会での新入社員と営業副部長では肩書きが違うし、新学期初日の集いでの教師と親では立場が違う。しかし、ほとんどの集まりでは、参加者が肩書きや学歴を捨てた方がうまくいく。それを実行するのはホストの役割だ。
主催者が力を使ってできることの三つ目は、ゲスト同士をつなぐことだ。閉会時には主催者とゲストの接点がゲスト同士の接点より多くても、閉会時には逆にゲスト同士の接点の方が多くなっていれば、その集まりは成功と言える。
オンラインの普及によって、誰でも手軽にオンラインイベントやオンライン交流会を主催できるようになりました。「参加者の記憶の残るイベントにしたい」「参加者の横の繋がりを作りたい」、そんな人に自信をもってお勧めできる一冊です。