(承前)プログラミング教育が必修化された背景には、第4次産業革命とIT人材不足があります。そのような時代背景を踏まえて、前回は文部科学省の考える「プログラミング教育の”Know Why(なぜプログラミング教育をするのか)”」について紹介しました。今回は、文部科学省が「コンピュータを理解し上手に活用していく力」の例として挙げている「プログラミング的思考」について考えていきたいと思います。
プログラミング的思考の定義と位置付け
まず最初に、「プログラミング的思考」という言葉はエンジニア・プログラマーの業界では使われていない言葉です。プログラミング教育必修化にあたり、文部科学省が独自に定義した言葉・概念なのです。文部科学省の文書「小学校プログラミング教育の趣旨と計画的な準備の必要性について 」によると、プログラミング的思考とは、
自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、 記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、と いったことを論理的に考えていく力
と定義しています。そして文部科学省は、このプログラミング的思考を次の様に位置付けています。
新しい学習指導要領総則によると、学習の基盤となる能力として「言語能力」「情報活用能力」「問題発見・解決能力」の3つが挙げられます。そしてプログラミング的思考は、この中の「情報活用能力」に属しています。
新しい学習指導要領において、情報活用能力は、「学習の基盤となる資質・能力」と位置付けられ、「教科等横断的な視点から教育課程の編成を図」り育成することとしています。そして、学習指導要領解説総則編においては、「情報活用能力」は、学習活動において必要に応じてコンピュータ等の情報手段を適切に用いて、情報を得たり、整理 ・比較したり、発信・伝達したり、保存・共有したりといったことができる力であり、さらに、このような学習活動に必要な情報手段の基本的な操作技能や、プログラミング的思考、情報モラル、情報セキュリティ等に関する資質・能力も含むものとしています。
小学校プログラミング教育の手引(第三版)より引用
プログラミング的思考のイメージ
第4次産業革命を見据えて、文部科学省がプログラミング的思考を重視し始めたことは分かったかと思います。ただ、定義の説明だけでは分かりづらいので、もう少しプログラミング的思考の概念を噛み砕いて見てみましょう。
上図がプログラミング的思考を働かせるイメージになります。つまりプログラミング的思考のプロセスとは、問題解決のために必要な作業を分解し、命令(プログラム)に置き換えて、組み合わせること。それを試行錯誤して改善するプロセスということになります。この定義に基づくと、プログラミング的思考はブルームのタキソノミーでは「適用(応用)・分析」、思考コードではB軸思考に該当することになります。(続く)
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