去年の11月、文部科学省から学習指導要領の改訂にむけて諮問文が出されたことはご存知でしょうか。
この諮問文の内容を要約すると、「変化の激しい未来社会に備えて、新しい教育への質的変換を行なっていきます」となります。そして、その方法として推奨されているものがアクティブラーニングなのです。
そこで今回は、アクティブラーニングについて学びたい人・授業で実践したい人にお勧めの書籍を紹介したいと思います。
田村学 著『授業を磨く』
田村学先生は文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官で、アクティブラーニングの第一人者の1人です。教員時代から「生活科・総合的な学習の時間」の実践やカリキュラム研究にも取り組まれておられ、なるほど豊富な現場経験と確かな技術に裏付けされた分かりやすい説明で、本書も書かれています。
内容紹介
本書は次の三部構成で書かれています。
- 21世紀型学力を育成する授業
- 教師力を磨く − イメージ力のすすめ −
- 授業を磨く − アクティブ・ラーニングのすすめ −
『授業を磨く』の目次より
まず第1章では、アクティブラーニングが叫ばれるようになった時代背景と、21世紀の社会に求められるスキル(汎用的能力)についてのイントロダクションがあります。こうした社会的なニーズに応えるために、今どのような学習方法・授業が子供たちに必要なのか分かりやすく説明されています。
第2章では、新しい学習方法・授業に対応するための教師の意識改革を訴えています。新しい教育に変わるためには、一年間に千単位時間以上も実施される授業が変わっていく必要があるわけです。そのための具体的なアドバイスが丁寧に書かれています。
最後の第3章では、授業の質的転換に向けたアクティブラーニングについて説明しています。理論だけではなく具体的な授業の事例や、思考ツールを使った学習活動例がふんだんに紹介されています。
子供たちが生き生きとする授業を実践するために
本書で特におすすめしたいのが、第2章「教師力を磨く − イメージ力のすすめ −」です。
「アクティブラーニングを実践してみたいけど、具体的にどうすれば良いかわからない」
こんな悩みを抱えた先生・講師の方は多いのではないでしょうか。本書では授業を変えるためのポイントとして次の三点を挙げています。
- 「受身・個別」から「探求・協同」のイメージをもつ
- 「教師中心」から「学習者中心」へ転換する
- 教師中心のよい指導法は「継承」する
田中学先生は「イメージ力」こそが、優れた授業を実践するための重要な教師力だと考えています。
霧に包まれたような、ぼんやりとした授業を目指そうとしても、それは難しい。自分のクラスの子ども一人一人が、本気になって学習活動に没頭する姿を具体的に思い浮かべることができる授業イメージがあれば、その実現可能性は飛躍的に高まる。
では、どうしたら「イメージ力」を鍛えることができるのでしょうか。本書ではイメージ力を高める三つの方法を紹介しています。
- 自ら授業を実践し、多くの人に参観してもらう
- 多くの優れた授業実践を参観する
- 日々の授業実践について語り合う
さらに本書では、実際の授業での留意点や単元作り、授業作りのポイントについても紹介されています。
アクティブラーニングの時代背景から実際の授業事例まで網羅した本書は、「子供たちが生き生きとする授業」を実践するための第一歩として最適な一冊ではないでしょうか。