読書をする人とイノベーター理論

マーケティング業界には「イノベーター理論」という考え方があります。イノベーター理論では、消費者を「イノベーター」「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」の5つに分類して考えます。最近、この考え方を「読書をする人」に応用して考えるようになりました。今まで私は「全ての人」にとって読書は奨励されることだと思っていました。しかしイノベーター理論で考えると、「読書をする人」は集団の16%程度であることが自然な状態なのです。このことに気が付いてから、読書観が大きく変わりました。


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イノベーター理論

イノベーター理論では、新商品を購入するタイミングの違いによって、消費者を次の5つに分類して考えます。

イノベーター(2.5%)」は、商品を最も早く購入するユーザーです。新し物好きで新商品には真っ先に飛びつく人たちです。

アーリーアダプター(13.5%)」は、イノベーターほど積極的ではないですが、流行には敏感なユーザーです。発信力があって市場への影響力が大きい層です。

アーリーマジョリティ(34%)」は、新商品の購入には慎重だが、アーリーアダプターの影響を受けて比較的早く購入にいたるユーザーです。

レイトマジョリティ(34%)」は、新商品に対してはかなり懐疑的で、自分の周囲の大半が使っているのをみてから購入するユーザーです。

そして「ラガード(16%)」は、ユーザーの中で最も保守的な人たちで、ほとんど最後まで購入にいたらないような層です。スマホの例で言うと、最後までガラケーを使っているような人たちです。

イノベーター理論によると、ある集団において「新しいもの」を積極的に取り入れる人の割合は、イノベーターとアーリーアダプターを合わせた16%程度ということが分かります。

「読書をする人」はイノベーターとアーリーアダプター

小説や雑誌などの「嗜好を目的とした読書」をのぞき、「読書をすること」は「新しい考え」を積極的に取り入れようとする行為に他なりません。「読書をする人」は、その分野におけるイノベーターもしくはアーリーアダプターと言えるでしょう。

イメージしやすいように、具体例で考えてみましょう。ICT教育やアクティブ・ラーニングなどの専門書を普段から読んでいる先生は、「新しいもの」を積極的に取り入れようとしているイノベーター/アーリーアダプターです。そのような先生を何人か思い浮かべてみてください。そのような先生方の割合は、おそらく全教員の16%前後ではないでしょうか。これがイノベーター理論です。

それでは、読書をしないアーリーマジョリティやレイトマジョリティは、どのようにして「新しいもの」を知るのでしょうか。それは「知っている人に聞く」ことです。職場でパソコンの具合が悪くなったら、多くの人はパソコンの詳しい人に相談しますよね?これと同じです。自分が不得意なことについては、読書で勉強をせずとも、人に聞いて解決すれば良いのです。(もし自分で検索したり本を読んで解決するという人は、ITに関してイノベーター/アーリーアダプターです。)

したがって読書をする人が16%程度であっても、集団内のコミュニケーションがちゃんとしていれば全く問題ないのです。むしろ健全な集団であると言えるでしょう。自分の専門外の分野においては、「読書の習慣」よりも「同僚とのコミュニケーション能力」の方が重要になります。

では「読書の習慣」が重要になるのは、どの場面においてでしょうか。それは「自分の得意とする専門分野」においてです。自分の興味関心があって、周囲に貢献したいと思える専門分野をみつけてください。その専門分野で「イノベーター/アーリーアダプター」になることを目指すのです。ビジネス的にいうと、その分野での市場価値を高めましょう。読書はそのための強力なツールになります。

ポイントは、同じ人でも分野が変わればイノベーターになったりレイトマジョリティになったりすることです。「ある分野」が自分にとって「イノベーターになりたい分野」なのか、それとも「レイトマジョリティで満足できる分野」なのかを意識することが重要です。これからの時代は、自分のポジショニングを明確にしていくことが特に大事だと思います。