昨日に引き続き、「ストーリー」に関するお勧めの本紹介です。今日紹介する本は、ちょっと異色の「経営の本」でもあります。「経営の本」なんて普段は読まない人が大半だと思いますが、この本は面白いですよ。企業の堅苦しくて難解な経営戦略を「ストーリー」として見直すのです。そうすると、優れた戦略とは思わず人に話したくなるような面白いストーリーだ、ということが分かってきます。物事を「ストーリー」として考えていくことの重要性が実感できる名著です。
書籍紹介
目次は次の通りです。
- 戦略は「ストーリー」
- 競争戦略の基本論理
- 静止画から動画へ
- 始まりはコンセプト
- 「キラーパス」を組み込む
- 戦略ストーリを読解する
- 戦略ストーリーの「骨太10カ条」
著者は一橋大学大学院経営管理研究科の楠木建教授です。この本は今から10年前、2010に出版されたちょっと古い本ですが、中国・韓国・台湾などでも翻訳されている名著です。
この本のメッセージを一言で言えば、優れた戦略とは思わず人に話したくなるような面白いストーリーだ、と言うことです。戦略を構成する要素がかみあって、全体としてゴールに向かって動いていくイメージが動画のように見えてくる。全体の動きと流れが生き生きと浮かび上がってくる。これが「ストーリーがある」と言うことです。流れを持ったストーリーというその本質からして、戦略はある程度「長い話」でなくてはなりません。
ここでお話ししたいのは、競争戦略を「ストーリーづくり」として理解する視点と、その背後にある論理です。ストーリーと言う視点に立てば、競争戦略についてこれまでと違った景色が見えてくるはずです。
「まえがき」より
著者の主張は大変ユニークで面白いです。経営戦略をストーリーとして見立てた場合、その面白さを左右する要が「キラーパス」だと言います。キラーパスは、ストーリー全体の中核、つまり他のさまざまな構成要素と深いかかわりを持ち、「一石で何鳥にもなる」打ち手です。
書籍ではスターバックスやアマゾン、アスクルなどの企業の優れた経営戦略を例に出し、その戦略がなぜ「ストーリーとして面白いのか」を丁寧に解説されています。読んでいて「なるほど、この企業は成功しているのはこういう仕掛けだったのか!」と非常に感心させられます。面白いですよ。
ちょっと変わった本ですが、ビジネスに興味のある人でしたら、きっとのめり込むと思います。経営学者の本なので少し難しいところもありますが、物事を「ストーリー」として考えていくことの重要性が実感できる良い本だと思います。おすすめです。