昨日の続きです。3月31日に東大が全部局の授業のオンライン化を発表しました。いよいよオンライン授業に注目が集まりますね。家庭でのインターネット通信の不具合を想定して、学校の管理職の先生は今のうちに動いておくと良いでしょう。この際の基本的な考え方は、脱工業化社会のコードがポイントになります。「zoom以外のサービスを使ったオンライン授業の検討」は、利用サービスがzoomに集中する状況を分散化する対策です。「講義動画の配信準備」は、生徒が学習する時間帯を分散化しています。そして「Google classroomやoffice365などの生徒利用」は、学習方法の分散化(個別最適化)に繋がります。
議論を分かりやすくするために、単純化して考えてみましょう。対面での講義型授業、オンラインでの講義型授業、講義の動画配信、そしてGoogleクラスルームなどのクラウドサービスを活用したPBLについて比較してみましょう。比較の観点は、場所・時間・学習方法の生徒の自由度です。すると、対面→オンライン授業→講義の動画配信→クラウド活用と進むにつれて、場所・時間・学習方法の自由度が増えていく傾向があります。
場所の自由度 | 時間の自由度 | 学習方法の自由度 | |
対面での講義型授業 | ▲ | ▲ | ▲ |
オンラインでの講義型授業 | ○ | ▲ | ▲ |
講義の動画配信 | ○ | ○ | ▲ |
クラウドを活用したPBL | ○ | ○ | ○ |
慌てて補足をしますと、上記の表はイメージを持ちやすい様に単純化しています。実際の教育現場では、対面授業であっても学習方法や時間の自由度がある学校はあります。またオンライン授業であっても生徒同士の対話が中心であったり、PBLを行っていたりする授業もあります。反対にクラウドサービスを使っていても、学習方法の自由度が必ずあるとも限りません。その点は御留意ください。
ポイントは何かというと、休校中の生徒の学習をデザインするにあたり、場所・時間・学習方法などの自由度をどうデザイン(設計)するかということです。コロナウイルス対策なので、場所の自由度(=オンライン)は必須です。じゃぁ時間の自由度はどうするか。朝のホームルームとしてクラス全員参加のオンラインミーティングを行う?オンライン授業は6時間目まで?それとも午前中のみの短縮?学習方法の自由度はどうするか。先生の講義(ティーチング)を聞く?プラットホームで生徒同士のディスカッションを行う?課題(プロジェクト)を与えて、進め方は生徒に任せる?
学校によって色々なデザインの仕方があると思います。例えば、武蔵野大学中高では「午前中は5教科のオンライン授業」「午後は自学」というデザインで、次のような対応を行うことを発表しました。複数のアプリ(Classi、スタディサプリ、Zoom)を活用することでリスクヘッジをしている点にも注目ですね。
(1)4月中は登校禁止とし、入学式・始業式は中止します。学校からの連絡や校長メッセージなどは学校 HP に掲載していきます。
(2)授業は「オンライン授業(Teaching)× 教員による質問対応(Coaching)」とします。
・4月13日よりオンライン授業を開始する予定です。
・生徒は、(a) 朝拝・終礼は Zoom で全員参加すること。 (b) オンライン授業は指定の時間割で視聴し、質問はZoomで担当教員にすること。
・出席確認(履修状況)は、スタディサプリなどの受講状況から判断します。
・新入生に対しては、オンライン授業に関する説明会を事前に実施する予定です。
・保護者面談もオンラインで実施する予定で考えています。
※ 各家庭におきましては、Classi、スタディサプリ、Zoom などの使用のために、インターネッ トに接続できる環境を用意していただきますよう、お願いいたします。なお、詳細につきま しては「オンライン授業マニュアル・授業計画表」をご確認下さい。(4月 10 日配信予定)
「武蔵野大学中高 2020年度4月以降の対応について」より引用
武蔵野大学中高の対応例からも分かるように、自由度のデザインは有る・無しの二元論ではなく、自由度の有るものと無いものを組み合わせたハイブリッドの形になるでしょう。そのバランスの取り方が重要になります。
場所・時間・学習方法などに自由度を持たせることは、脱工業化社会の考え方(個性化・統合化・非同時化・分散化・適正規模化・地方分権化)につながっていきます。一方、工業化社会の考え方で休校中の学習をデザインをすると、いかに生徒を監視するかに向かいます。実際、zoomには生徒が授業に集中しているかを監視する機能があるのです。
学校が休校中のオンライン学習をどのようにデザインするかを見れば、その学校組織が「脱工業化社会よりの考え」か「工業化社会よりの考え」かが詳らかになるでしょう。保護者は確実に学校の対応をみています。慣れないオンライン授業などの対応で大変だとは思いますが、各学校はポスト・コロナショック時代を見据えて、オンライン学習のデザインに取り組むことをお勧めします。(了)