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Society5.0は脱工業化社会(2)

(承前)政府の情報発信だけを見ていると「Society 5.0 のイメージは、 AI やロボットが発達して、 様々な最先端のサービスが一般化する社会だね」となってしまうのです。

違います。Society5.0で本当に大事なのは、「工業化社会の考え方から脱工業化社会の考え方に移行すること」なのです。


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工業化社会の考え方

工業化社会の主な考え方(=コード)は、規格化・分業化・同時化・集中化・極大化・中央集権化です。工業化社会の考え方はこれら以外にもたくさんあります。基本的には「工場モデルの生産性・効率を高めるような考え方」が「工業化社会の考え方」だと思っておけば理解しやすいでしょう。例えば、上記スライドには書かれていませんが、「要素還元主義」という考え方は工業化社会の考え方だと言えます。

脱工業化社会の考え方

一方、脱工業化社会の考え方(=コード)は、個性化・統合化・非同時化・分散化・適正規模化・地方分権化です。基本的には「工業化社会の考え方の真逆」が「脱工業化社会の考え方」となります。

規格化の反対は個性化です。中央集権で規格を作るのではなく、市場によって作られるデファクトスタンダード(事実上の標準規格)が良いですよと。分業化の反対派統合化です。「プロデューサー(生産者)」と「コンシューマー(消費者)」が分業されるのではなく、全員が「生産者であり消費者でもある(プロシューマー)」になりますよと。同時化の反対は非同時化です。24時間、好きな時間にできることは良いですよと。これはコンビニ的な24時間営業の発想ではなく、ネットショッピングのように時間に縛られずに買い物できるイメージです。

集中化・極大化・中央集権化の反対は分散化・適正規模化・地方分権化です。多くの大企業や組織は中央集権的ですが、組織を管理し統制し規制し運用していくコストは年々高まり鈍重としてきたのはご存知の通りです。そして、先ほど例に挙げた「要素還元主義」の反対は「システム思考」です。部分最適化を繰り返していっても、全体は決して最適化されないことに世の中が気付き始めています。

工業化社会から脱工業化社会へ

そして今、Society5.0を迎えるにあたって、「工業化社会の考え方」から「脱工業化社会の考え方」にシフトする時期にきています。

気をつけなければいけないのは、「工業化社会の考え方」が間違っていて「脱工業化社会の考え方」が正しい、ということではない点です。「正しい/間違っている」というものは文脈によって変わります。例えば、工場の生産性を高めるためには「工業化社会の考え方」で改善を行った方が近道でしょう。この場合は「工業化社会の考え方」が正しいと言えます。

大事なポイントは、時代の流れが「脱工業化社会の考え方」に向いているということです。日本の人口は年々減少し、2060年には生産年齢人口は今の60%にまで落ちる見通しです。工業化社会のビジネスモデルでは、人件費の安い新興国や開発途上国との競争に絶対に勝てません。日本が生き残るには脱工業化社会へ移行しなければならないのです。日本の子供たちに将来貧しい生活をさせたくないのであれば、脱工業化社会への移行は必須だと思っています。

さて、ここまで読まれた方の中には「日本はもう脱工業化社会に移行できているんじゃない?」と感じた人がいるかもしれません。確かに「工場モデルの考え方」なんて聞くと古臭いので、こう感じることは当然だと思います。でも実は、「工業化社会の考え方」は私たちの認識以上に社会に深く根付いているのです。次回の記事では、このことについて説明していきたいと思います。(続く)