今朝、『「オンライン授業はコロナ理由に限定」、福岡市教育委の通知に不登校の保護者落胆』というニュースを読んでとても驚きました。福岡市教育委員会は「公教育の公平性」を理由に、オンライン授業の対象者は「コロナを理由に登校できない子供」に限るというのです。不登校の子供をもつ保護者からは、「学校に行けない状況は同じなのに」と不満が漏れているそうですが、当然ですよね。不登校の子供たちこそ、学校がオンライン授業でサポートすべきだと思います。
「でも教育委員会が反対していたらできないよ」と思うかもしれません。違います。実は学校長が決断さえすれば、たとえ教育委員会が反対していても「不登校の子供のためにオンライン授業を行うこと」は可能なのです。付け加えると、文部科学省のこれまでの通知を読めば、今回の件では福岡市教育委員会が間違っていることが分かります。そこで今日は、これらの根拠となる教育法規と文部科学省の文書を紹介したいと思います。
教育委員会の権限は強くない
まずは教育委員会の権限について明らかにしておきましょう。教育委員会と聞くと、公立の学校に対して大きな権限を持っている印象がありますが、実はそんなことはありません。
1998年に文部科学省から「今後の地方教育行政の在り方について(中央教育審議会 答申)」という文書が出されています。この文書の第3章 2節「教育委員会と学校の関係の見直しと学校裁量権限の拡大」に次のような記述があるのです。
また、教育委員会は、学校の管理権者として、法令の規定に基づき指示・命令を通じて学校における適正な事務処理の確保を図るとともに、教育内容・方法等に関する専門的事項については、主として法律上の強制力のない指導・助言を通じて学校の教育活動を支援する仕組みとなっている。学校が教育委員会の指示・命令に基づいて行った行為については、指示・命令を発した教育委員会が責任を負うべきであるが、指導・助言については、これを受けてどのような決定を行うかは、校長の主体的判断に委ねられているものであり、それに伴う責任は第一義的には校長が負うべきものである。
つまり、教育委員会は学校に対して「指示・命令」と「指導・助言」の2つを行えます。そして「指示・命令」については、必ず根拠となる法令が必要になるのです。
一方、法的根拠のない内容、例えば教育内容・方法等に関する内容については「指導・助言」になるのです。この「指導・助言」には法律上の強制力はなく、それに従うか否かは「校長の主体的判断」に委ねられている、ということです。
今回の件で福岡市教育委員会は、不登校の子供にオンライン授業を行わない理由として「公教育の公平性」を挙げています。当然、この主張には根拠となる法律が存在しないため、この通知は「指導・助言」にあたります。
「指導・助言」であれば、教育委員会に従う従わないの判断は学校長に委ねられます。つまり、学校長が本気になれば、教育委員会が反対している福岡市におていも「不登校の子供のためにオンライン授業を行うこと」は可能なのです。
教育機会均等は子供たちの味方
先ほど福岡市教育委員会の「公教育の公平性」に法的根拠は無いと書きましたが、「いやいや、教育機会均等があるじゃないか」と思われたかもしれません。でも、実は違うんです。教育基本法にある教育機会均等の趣旨は、むしろ不登校や長期病欠をしている子供たちに対して、通学時と同じ教育の提供を促すものなのです。教育機会均等は、子供たちの味方なのです。
文部科学省の文書から紐解いてみましょう。令和元年10月25日に文部科学省から「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」という文書が出されています。これには次のような記述が書かれています。
(4)不登校児童生徒に対する多様な教育機会の確保
不登校児童生徒の一人一人の状況に応じて,教育支援センター,不登校特例校,フリースクールなどの民間施設,ICTを活用した学習支援など,多様な教育機会を確保する必要があること。また,夜間中学において,本人の希望を尊重した上での受入れも可能であること。
驚かれたでしょうか。はっきりと文書に「ICTを活用した学習支援」と書かれていますね。オンライン授業がこれに該当することは明らかでしょう。教育機会均等は、不登校の子供たちへのオンライン授業を支持しているのです。
さらには「(別記2)不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」には、次のような記述が書かれています。
このような児童生徒を支援するため,我が国の義務教育制度を前提としつつ,一定の要件を満たした上で,自宅において教育委員会,学校,学校外の公的機関又は民間事業者が提供するICT等を活用した学習活動を行った場合,校長は,指導要録上出席扱いとすること及びその成果を評価に反映することができることとする。
いくつかの要件をクリアする必要はありますが、オンライン授業でも指導要録上の出席とすることが出来るのです。上記の事柄は、実はコロナ前から整備されていたのです。
断言します。上記を根拠にして都道府県教育委員会や文部科学省に問い合わせをすれば、間違いなく「不登校の子供のためにオンライン授業を行うこと」を支持するでしょう。福岡市の公立学校であっても、堂々と不登校の子供たちのためにオンライン授業を行うことができるのです。
不登校の子供たちをサポートしよう
今回紹介した内容を知っていれば、不登校の子供たちをサポートすることができます。私のサポート校でも、不登校の子供がオンライン授業に参加してくれたと、保護者の方と先生方が大変喜んでいました。
オンライン授業ができる学校にお勤めの先生は、ぜひ学校長に提案してみてください。保護者の方は、担任の先生にオンライン授業をお願いしてみてください。もちろん、このブログを引用して頂いて大丈夫です。
学校長は決断をしてください。ポストコロナ時代の学校では、対面指導と遠隔・オンライン教育を併用する流れになります。もう既に「学校で学びたくても学べない児童生徒への遠隔・オンライン教育の活用について」議論がなされているのでから。
資料2 新型コロナウイルス感染症を踏まえた、初等中等教育におけるこれからの遠隔・オンライン教育等の在り方について(検討用資料)
不登校の子供たちのために、多くの学校でオンライン授業が行われることを願っています。
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