2月16日(日)、和洋九段女子中学校高等学校で開催された第4回新中学入試セミナーの開催レポートをお届けします。トップバッターは首都圏模試センター取締役・教育研究所長である北一成氏の基調講演からです。講演タイトルは「2020年度中学入試の総括から考える2021年度中学入試の動向」です。北先生は過去33年間におよぶ歴史的な入試動向を振り返った上で、今年の中学入試の動向について解説し、その背景にある保護者の意識変化について言及されました。
歴史的な入試動向から考察
これからの未来を予測するために、歴史を振り返ることは有用です。北先生はまず導入として中学入試の取材光景を紹介しながら「私立・国立中受験者数は6年続きで増加」していると説明し、その理由として「私立中学入試の多様化による新たな受験市場の広がり」を挙げました。そして過去33年間の受験市場の歴史を紐解き、現在のムーブメントによって過去と同様の成長曲線が引き起こされていると指摘しました。
受験市場の大きな成長は過去に2度あり、1回目は1990年頃の「私立中高一貫校の大学進学実績の優位性による成長曲線」です。2回目は2007年迄の「私立中高一貫校の学習量の優位性による成長曲線」で、ゆとり教育の反動によるムーブメントです。しかし2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災などの影響で中学受験者数は減っていきます。そして、2014年を境に下げ止まり、2015年から2020年にかけて6年連続で増加、今年の中学受験者数は約49,400名(2,200名増、前年比104.7%)になりました。2007年のピークが50,500名ですので、まさに3回目の成長曲線が進行中だと言えるでしょう。
私立中高一貫校の「学び方」の変化
現在の中学受験市場の成長を牽引しているのは、いったい何なのでしょうか。北先生はずばり、『私立中高一貫校の「学び方」の変化』だと語ります。2020年度の大学入試改革と2024年以降の第二期大学入試改革を見据えて、私立中高一貫校が学びを変容させ始めています。そして、このような学校の変化は「小学生の多様な資質と可能性を測る新たな入試」として中学受験市場に表れているのです。
得意な科目で勝負できる算数一科目入試や英語入試、公立中高一貫校と同じ適性検査型入試などはイメージができると思います。しかし、思考力入試を始めとする新タイプ入試は多種多様です。例えば、聖学院の「ものづくり思考力入試」、和洋九段女子のPBL型入試、工学院の思考力テスト(図書館入試)、聖セシリア女子のグループワーク型読解・表現入試、聖和学院の英語プログラミング入試、山脇学園初の探究サイエンス入試、聖ヨゼフ学園の総合・グループワーク型入試などなど、枚挙に遑がありません。中学入試においても、個別最適化が進み始めていることが分かります。(続く)
2 comments
Pingback: 【開催レポート】第4回新中学入試セミナー(3)和洋九段女子のPBL型授業が引き起こす生徒と教師の自己変容 | 福原将之の科学カフェ
Pingback: 【開催レポート】第4回新中学入試セミナー(11)アクレディテーションによる学校改革のエビデンス | 福原将之の科学カフェ