ICT教育関連の原稿を執筆するにあたり、最近はいくつかの専門書を読み返しています。今日紹介する本は参考文献にしようと考えている一冊、デジタル・シティズンシップ教育についての書籍です。
デジタル・シティズンシップは一言で言うと「情報モラル」になりますが、その言葉のニュアンスは抑制的ではなくポジティブな考えに基づいています。「デジタルに住む市民(シティズンシップ)として、どのように善し悪しを考え、行動していくべきかを子供達に考えさせる教育」と捉えると良いでしょう。
このデジタル・シティズンシップ教育は、ソーシャル・メディア時代の新しい情報教育として欧米を中心に世界で広がっています。今日紹介するこの本は、そんなデジタル・シティズンシップ教育について日本で初めて書かれた解説書です。ICTデバイス1人1台のルール作りなどに携わっている先生方におすすめの一冊です。
書籍紹介
目次は以下の通り。
- 第1章 デジタル・シティズンシップとは何か(坂本旬)
- 1 ポジティブなデジタル・シティズンシップ
- 2 アメリカのデジタル・シティズンシップの9つの要素
- 3 ヨーロッパのデジタル・シティズンシップ
- 4 OECDとユネスコのデジタル・シティズンシップ
- 5 日本のデジタル・シティズンシップを考える
- 第2章 情報モラルからデジタル・シティズンシップへ(芳賀高洋)
- 1 シティズンシップの哲学――高い理想と目標
- 2 情報モラル教育の閉塞感
- 3 情報モラル教育実践の具体的問題点
- 4 情報モラルのモラル性
- 5 日常と非日常
- 6 古典的題材のデジタル・シティズンシップ教育への転換
- 7 日本でのローカライズと実践について――新しい価値を生む創造性の育成
- 第3章 我が国の教育情報化課題とデジタル・シティズンシップ教育(豊福晋平)
- 1 世界から見た日本の教育情報化の位置づけ
- 2 教育情報化の失敗のカラクリを考える
- 3 GIGAスクール構想での戦略とデジタル・シティズンシップ
- 第4章 デジタル・シティズンシップ教育の実践(今度珠美・林 一真)
- 1 現行の情報モラル教育実践の課題
- 2 コモンセンス・エデュケーションの概要
- 3 授業実践の提案
- 4 保護者への提案
こちらの本は5人の専門家による共著として書かれています。どの章も読み応えがありましたが、個人的にお勧めなのが豊福先生が書かれた第三章「我が国の教育情報化課題とデジタル・シティズンシップ教育」です。
PISA2018のデータ分析から始まり、学校・家庭間のデジタルデバイド問題、そしてICT教具論/文具論に言及されています。いすれもICTデバイス1人1台時代におけるICT教育を考える上で重要なポイントですので、ICTに関わる先生は一読をお勧めします。
豊福先生はブログやTwitter、Facebookで積極的に情報発信をされているので、興味のある方はこちらもチェックしてみると勉強にあると思います。