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ChatGPT使用検出ソフト開発の競争激化から未来を考える

アメリカの教育業界では、ハイレベルな文章を書けるChatGPTが大きな話題になっています。最近ではプリンストン大学の学生が「ChatGPTが書いた文章かチェックするAI」を開発し、注目を集めました。教育現場において、「不正(AIの使用)を検知するAI」の開発は大きな規模のビジネスになるからです。ChatGPT使用検出ソフト開発が競争が激化しています。


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競争激化が未来を加速させる

ChatGPT使用検出ソフト開発の競争激化についてはこちらの記事がお勧めです。

記事を読んで「なるほど」と思ったのはこちらの部分です。

AIが成長するにつれて、教師のその技術への理解を支援することは、ますます価値が高まる。そして、AIコンテンツを検出できることは、それを不適切に使用することへの強い抑止力となるため、学校が大規模な学問的不正行為を回避するのを支援することは、それ自体が10億ドル(約1300億円)規模のビジネスになる可能性がある。ChatGPTの使用を見抜くツールの需要は、ChatGPTそのものの需要ほど大きくはないだろうが、それでもかなりの規模になることは間違いない。

いずれにせよ、ボットの書き方や選んだ言葉から、疑わしいものを確実に発見し、フラグを立てることができるツールを開発した企業は、大きな市場地位を獲得することになるだろう。もちろん、学術的な研究のインテグリティや人間の創造性の価値を維持することにも貢献する。

これは、文字どおりの意味でも、比喩的な意味でも、悪い価値提案ではない。

どのようになろうが、AIだけでなく、私たちが、一体誰が話しているのかを見分けることができるようになるという点で、ChatGPTのような生成AIには並外れた価値と利益があるのだ。

私が少し懐疑的なのは、最後の「AIだけでなく、私たちが、一体誰が話しているのかを見分けることができるようになるという点」です。果たしてAIと人間を文章だけで見分けることはかのうになるのでしょうか。これは言わば「文章版のチューリングテスト」ですね。

チューリングテストは1950年にアラン・チューリングによって提唱された「人間か人工知能か」を見分けるテストです。

現在知られるその手順は以下の通り。

【1】一台のコンピュータと2人の人間(判定者・出題者)を用意する
【2】判定者とコンピュータ・判定者と出題者でそれぞれ対話する
<条件1>コンピュータも出題者も相手に人間だと思われるように対話する
<条件2>対話は姿が見えない(相手と隔離された)状態で行われる
【3】判定者が対話相手が人間かコンピュータかを答える

判定者が相手が人間かコンピュータかを判別できなければ、コンピュータはチューリングテスト「合格」というわけですね。一般的には複数いる判定者のうち30%をだますことがチューリングテストの合格ラインとされています。

https://data.wingarc.com/how-close-is-ai-24823

テクノロジーは市場規模の大きさと競争によって進化が加速します。検出ソフトが進化して見分けられるようになれば、ChatGPTが見分けられないように進化して、それを見分けようと検出ソフトがさらに進化して‥。ChatGPT使用検出ソフト開発の競争激化は、検出ソフトだけでなくChatGPTも加速度的に進化させるでしょう。

ChatGPTなどの文章生成AIが本質的な意味でチューリングテストをクリアできるようなるかは断言できませんが、ひとつ確実に言えることは「AIが書いた文章が溢れる社会」が到来することです。

もちろん小説家など「人が書いた文章」は今後も残り続けますが、その他の大部分である「AIが書いても差し障りのない文章」はAIに置き換わっていくでしょう。多くの人がAIを使って文章を書く時代の到来です。

そういう時代では文章から「AIと人」を見分けること自体がナンセンスでしょう。そして「人が文章を書く」こと自体がレアになるでしょう。例えるなら現代社会では「パソコンを使って書く」人がほとんどで「自筆で書く人」がレアである、に近いかもしれません。

現代社会において「文章を書く能力」は汎用性が高く、文章力がある人は多くの仕事場で重宝されていいます。したがって教育現場において「文章を書く能力」をトレーニングすることは重要で、「生徒の不正(AIの使用)を検知すること」は大事です。しかし「多くの人がAIを使って文章を書く社会」になればどうでしょうか。そうなれば、不正を検知することはもちろん、「文章を書く能力」をトレーニングすることの意義自体が揺らぐわけです。

ChatGPTを実際に使ってみて、このような未来は遅かれ早かれやってくのではないかと感じました。それぐらいChatGPTはインパクトのあるAIです。学校の先生をはじめとする教育関係者でChatGPTをまだ使ったことのない人は、ぜひ今のうちに使ってみることをお勧めします。