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リアルとオンラインの体験価値について考える

コロナによって打撃を受けている観光や飲食業を支援するため、「Go To キャンペーン」が始まりました。Go To トラベル、Go To イートに加えて、Go TO イベントとGo To 商店街が行われるそうです。東京はGo TOキャンペーンの対象外だったのですが、感染拡大が落ち着いたこともあって10月過ぎから対象に含まれるようになりました。嬉しいですね。先日のコンサートでリアルの体験価値を実感したこともあり、今年度初の旅行に申し込んでみることにしました。


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リアルとオンラインの体験価値は別物

最近、リアルとオンラインの体験価値について考えています。昨日のブログでも書いたように、リアルにはリアルの体験価値があり、オンラインにはオンライン体験価値があります。例えば旅行もそうです。「え、旅行でオンライン?」と思われるかもしれませんが、実はコロナによって「オンライン宿泊」という新しいサービスが誕生しています。

この記事を読むとよく分かるのですが、「オンライン宿泊」と「リアルの旅行」とは全く体験価値が異なるのです。どちらが良いかという次元ではなく、全く別物だという理解が適切でしょう。

例えば、オンライン宿泊では温泉に入れませんし、美味しい御馳走も食べられません。そのかわり、一期一会で知らない方と出会ったり、思わぬ有名人のゲストと会話を交わしたりと、リアルの旅行ではできない体験をすることができます。

オンライン宿泊は、リアルの体験価値をオンラインで再現(代替)しようとする発想ではなく、オンラインでは「リアルでは体験できないこと」を創造しようという発想なのです。オンラインイベントを企画する際の、最も重要な観点だと思います。

リアルとオンラインのハイブリッド学校説明会

一方で、コロナ禍において注目されつつあるのが「リアルとオンラインのハイブリッド企画」です。具体例をあげると、学校説明会を人数制限で開催しつつ、その様子をオンラインでライブ配信をする「ハイブリッド学校説明会」などです。このハイブリッド学校説明会は、いつくかの私立学校で実際に行われ始めています。

リアルの体験価値を大事にしつつ、オンラインの良いところも活用しようという発想ですね。このようなハイブリッドの取り組みは、リアルで大人数を集められないコロナ禍の現状においては非常に良い施策だと思います。

しかしコロナが終息した後(アフターコロナ)の社会を考えると、このような「リアルとオンラインのハイブリッド」のイベントは難しいのではないかと思います。

リアルとオンラインのハイブリッドに可能性はあるか

私が毎週参加しているミーティングの一つに、オンラインとリアルのハイブリッドミーティングがあります。私は遠方なのでオンラインから参加をして、先方はリアルの会議室で集まってミーティングを開いています。このようなハイブリッドミーティングは十中八九、議論の中心がリアル側になるのです。

これは参加メンバーの努力の問題ではなく、リアルとオンラインにおける「人の存在感の格差」の問題、つまりシステムの問題だと私は考えています。「オンラインで参加しているメンバーの存在感」は「リアルのメンバーの存在感」より軽いため、会話の重心がリアルメンバーの方に偏っていくのです。言い換えると、リアルとオンラインで非対称性があるため、重心が一方に偏り、対話のバランスが崩れてしまうのです。これがハイブリッドの課題のひとつです。

ハイブリッドの課題はまだあります。オンラインで参加している人にとって適切な「絵(映像のカット)」や「尺(時間の間隔)」は、リアルで参加している人のそれとは異なっているという問題です。

オンラインとリアルの両方の参加者にとって適切な「絵」と「尺」でイベントを開催できれば良いのですが、これは非常に難問です。「絵」は配信カメラを増やせば対応できますが、「尺」についてはそうはいきません。オンラインとリアルの両方に配慮することは非常に難しく、これを追求しようとすると今度はコストが増えてしまうのです。

仮にコストをかけて「オンラインとリアルに配慮したハイブリッドイベント」を作ったとします。それに対して「オンラインならではの体験価値があるオンラインイベント」と「リアルならではの体験価値があるリアルイベント」が競合になるわけです。コスト的にもクオリティ的にもハイブリッドは勝てないと思います。もちろん、これからの試行錯誤によって解決策が生まれ、オンラインとハイブリッドこそが「新しい時代のスタンダード」になる可能性も十分あります。

オンラインはオンラインの、リアルはリアルの良さを生かして、それぞれの長所を研ぎ澄ましていく方が良いのか。それとも、ハイブリッドの課題を解決して「新しい時代のスタンダード」を作りだす方が良いのか。そんなことをコロナ禍の日々で考えています。テクノロジーの発展で状況が変化する可能性もありますし、結論を出すには時期尚早ですので、これからも考え続けたいと思います。