国立天文台三鷹に保管されていた「6mミリ波電波望遠鏡」が、第2回(2019年度)日本天文遺産に認定されました。「6mミリ波電波望遠鏡」は、パラボナアンテナの直径が6メートルで、波長が数mmの電波を観測するための国内初のミリ波電波望遠鏡です。私が院生の頃にお世話になった45m野辺山電波望遠鏡や野辺山ミリ波干渉計は、この6mミリ波電波望遠鏡のおかげで開発されたといっても過言ではありません。今回、日本天文遺産に認定されたニュースを聞いて、私も感慨に浸りました。
6mミリ波電波望遠鏡
大学院生だった頃、私は国立天文台の野辺山宇宙電波観測所に住み込みで研究をしていました。冬場の観測シーズンには、45m野辺山電波望遠鏡と野辺山ミリ波干渉計を使って近傍渦巻銀河を観測し、夏場になると望遠鏡のメンテナンスのお手伝いをしていました。電波望遠鏡から観測天文学の基礎を学ぶことができました。当時はあまり実感していませんでしたが、その経験はとても貴重だったと思います。
プロの天文学者を目指す学生にとって、気軽にアクセスできる場所に「世界レベルの望遠鏡」があることはとても重要です。昔の野辺山宇宙電波観測所では、電波天文学の基礎を学ぶために大学院生がたくさん集まり、研修なども盛んに行われていました。しかし現在、望遠鏡の老朽化と予算削減により、以前の賑わいはほとんど無いそうです。
「6mミリ波電波望遠鏡」が日本天文遺産に認定されたニュースを知って、久しぶりに昔を思い出しました。おそらく6mミリ波電波望遠鏡も、引退まで多くの天文学者を育てられてきたのだと思います。こうした明るいニュースによって科学研究の育成に予算がまわることを心の片隅で願いながら、6mミリ波電波望遠鏡に「お疲れ様でした」と伝えたいと思います。