SDGsをテーマにしたPBL型授業をしていると、教師もSDGs関連のテクノロジーに興味が出てくると思います。今日はSDGsの7番目の目標、クリーンエネルギーのテクノロジーとして期待されている「人工光合成」の本を紹介したいと思います。
書籍紹介
著者は個人ではなく、光化学協会(光化学の専門家による協会)が編者扱いとなっており、協会としての知見がまとめられた書籍となっています。全部で9章立ての本で、大まかには次のような構成になっています。
- 人工光合成の基礎知識(1〜2章)
- 人工光合成の研究の歴史(3章)
- 研究アプローチの詳細解説(4〜7章)
- 人工光合成の今後の展望(8章、9章)
随所に化学式を使った説明があるため、高校化学の知識が無いと少し難しいかもしれません。ただ1章・2章・9章の化学式は比較的易しいので、この章だけでも読めば「人工光合成が期待されている理由」や「人工光合成の今後の展望」を理解することができると思います。詳細まで全部を理解しようとしなければ、人工光合成研究の現状を大まかに把握できる良書だと感じました。
こんな人にお勧め
この本は、SDGsをテーマにしたPBLや探求学習に取り組んでいる生徒に手渡したい一冊です。ブルーバックスにしては少し難しい本のため高校生以上が推奨ですが、中学三年生で卒業探求に取り組んでいるような生徒は挑戦してみても良いと思います。読む子が読めばハマる一冊です。
そして、SDGsに取り組んでいる教員の方にも、ぜひ読んでもらいたい本でもあります。人工光合成は日本が世界をリードできている研究分野のひとつで、もし実現すればSociety5.0を通り越して限界費用ゼロ社会実現まで視野に入る超重要テクノロジーです。人工光合成による脱化石燃料のインパクトは、食料問題や環境問題だけでなく、格差社会の解消にも大きく貢献すると言われています。
しかし、このようなグローバルレベルで意義のある研究は、数十年単位の時間がかかるものです。人工光合成の研究は、さながら「区間毎に最速で走り切りながら次のランナーバトンを渡す駅伝競走のようなもの(書籍より引用)」なのです。次世代の人材育成、つまり今の子供たちの教育が重要なのです。Z世代の生徒たちが興味のあるプロジェクトに参画できるような環境を、これから一緒に実現していきましょう。