ソーシャルグッド無しではデータ活用ができない時代

データサイエンティストとは、大量のデータを整理・分析をする専門職業で、数学と統計学、プログラミング(計算機科学)の素養が必要です。近年のAI技術の発展によってデータ活用の価値が高まり、データサイエンティストの需要は高まっています。データ分析の専門家を求める企業が増える一方、人材育成が間に合っておらず、日本ではデータサイエンティスト不足になっています。こうしたIT人材不足を補うべく、プログラミング教育が小学校で必修化され、データサイエンティストを学べる大学が増えはじめました。そこで今日は、これからのデータサイエンティストに求められるソーシャルグッド(Social Good)について考えていきたいと思います。


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データ活用とソーシャルグッド

データ活用ビジネスは、企業にとって莫大な価値を生みます。Googleの検索エンジンや広告ビジネス、AmazonのECサイト、FacebookのSNS、Appleのプラットフォームなどなど、GAFAはデータ活用で急成長してきました。

しかし、こうした企業のデータ活用ビジネスに歯止めを掛けるべく、ヨーロッパ(EU)ではGDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)が2018年に施行されました。GDPRは、EU内の全ての個人のためにデータ保護を強化し、統合することを意図した規則です。企業が集めたユーザーの個人情報を、自社の利益だけのために活用されることを防ぐ狙いがあります。

世界ではこのような流れが来ているのです。世界中でデータ活用の価値が理解されてきたため、これからの時代は市民の個人情報を「自社の利益目的」で集めることは非常に難しくなるでしょう。

それでは、これからの企業は「市民の個人情報」などの秘匿性の高いデータは扱えなくなるのでしょうか。そんなことはありません。これからの時代では、個人情報などのデータ活用する企業にはソーシャルグッドが求められるようになると私は考えています。

ソーシャルグッド(Social Good)とは、地球環境や地域コミュニティなどの「社会(Social)」に対して良いインパクト(Good)を与える活動やサービスのことを言います。たとえば、企業のCSR(社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)などの活動がソーシャルグッドになります。

これからの時代、企業側のデータ活用方法を知ったうえで、市民が個人情報を提供するか判断するようになるでしょう。データ活用の目的が企業の利益だけなら、データは集まりません。逆にデータ活用の目的がソーシャルグッドであれば、市民の共感を集めてデータがたくさん集まるでしょう。もちろん、データを提供するユーザーへのリターンも重要です。

私は、ソーシャルグッド無しではデータが集まらない時代になると思います。企業は「どのようなデータ」を使って「どのようなソーシャルグッド」が実現できるかを考えることが重要になります。そしてその役割は、データサイエンティストが担うことになるでしょう。データサイエンティストを育てる学校には、ソーシャルグッドの観点を育む教育をおすすめします。