先生の読書量についての統計データを調べてみた

このブログでは先生向けに本紹介も行っています。先日、ある出版社の編集者が「教職年数５年以上経つと、先生は教育関連の本を読まなくなる」と言っている話を耳にしました。確かに勤務5年ほど経てば、一斉授業で困ることも減りますし、本を買って学ぼうとする先生は少数なのかもしれません。そこで今日は、「先生の読書量」に関する統計データについて調べてみました。先の編集者の持論を裏付けるデータは見つかりませんでしたが、興味深いデータでしたので紹介したいと思います。

日本人の約半数が1ヶ月に1冊も本を読まない

興味があるのは「先生」の読書習慣についてですが、その前に「日本人」の読書習慣の統計データを調べてみましょう。

実は平成７年から文化庁が毎年「国語に関する世論調査」を実施しているのですが、その世論調査の中で5年に一度「読書について」の項目が登場します。「国語に関する世論調査」のデータはこちらから見ることができます。

直近ですと、平成30年度の「国語に関する世論調査」の報告書から、日本人の読書に関する統計データを確認することができます。注目のデータはこちらです。

「日本人の約半数（47.3%）が1ヶ月に1冊も本を読まない」ことが分かりました。そして、この傾向は10年前（平成20年度）からずっと続いているのです。

気になるのは年齢別の読書習慣ですが、残念ながら平成30年度の調査結果には掲載されていませんでした。そのかわりに、１つ前の平成25年度「国語に関する世論調査」の報告書には、次の「年齢別・過去の調査との比較」のデータが掲載されていました。（縦軸が上の方が「本を読まない人」の割合が高くなります。）

このデータをみると、一番新しい平成25年度のデータでは、20代と40代では他の年代よりも若干「本を読まない人」の割合が少なくなっていることが分かります。一番古い平成14年度のデータに比べると、平成25年度と平成20年度の傾向は似ていますので、おそらく今現在の傾向は平成25・20年度の傾向に近いのではないでしょうか。

先生の読書量に関する統計データ

日本人の読書習慣の傾向が分かりましたので、今度は先生の読書習慣に関する統計データを探してみましょう。論文を検索してみたところ、広島県の市立の小中学校の教員803名を対象にしたデータを見つけました。

先生方の1ヶ月間の読書冊数の平均値は、図書館担当が4.9冊、小学校教諭3.7冊、中学校管理職3.0冊、そして中学校教諭は2.7冊でした。この論文では教職年数別にもデータを分析しており、それによると「小学校教諭で21～ 25年が4.9冊、26～ 30年で4.0冊」、「中学校教諭で16～ 20年3.1冊、26～ 30年で3.0冊」でした。

教職経験年数の多い教員の方が読書量が多く、冒頭の編集者の仮説「教職年数５年以上経つと、先生は教育関連の本を読まなくなる」とは異なる結果でした。

ただ、この広島県の先生の読書習慣データは、「日本人の約半数（47.3%）が1ヶ月に1冊も本を読まない」という日本全体の統計データと比べると、読書量が多すぎる印象がありました。

そこで別の統計データを改めて探してみたところ、2016年に発行の「日本における教職員の働き方・労働時間の実態に関する調査研究報告書」を発見しました。この報告書の中には、教職員の働き方の実態調査として「読書時間」も調査項目に含まれていました。

この調査は2015年12月に全国の公立小中学校、高等学校、特別支援学校の5,001名の教諭を対象に実施されており、前述の広島県の論文よりの日本全体の傾向を表しているだろうと考えました。

この調査研究報告書の中で興味深かったデータはこちらです。

小学校・中学校・高等学校の男女別に、「先生方の1日の平均読書時間」が集計されています。読書時間が一番多かったのが「高等学校の男性（約32分）」で、読書時間が一番少なかったのが「中学校の女性（約16分）」でした。

残念ながら「日本人の１日の平均読書時間」の統計データは見つかりませんでした。しかし、第55回学生生活実態調査によると「大学生の１日の平均読書時間」が30.4分（1日の読書時間「0」分は48％。平均時間は30分と前年から大きく変化せず）とありますので、「先生方の1日の平均読書時間」は16分〜32分というのは信憑性が高いと思います。

この調査データを使って「教職年数５年以上経つと、先生は教育関連の本を読まなくなる」を検証できたら面白かったのですが、残念ながら教職年数別のデータは含まれていませんでした。

先生の読書量に関する統計データの紹介は以上になります。各リンク先からデータは全て確認できますので、興味のある方はそちらをご覧ください。